はりぽたdeアリス

 

ある天気の良い日の午後、シリウスは日向ぼっこをしようと外へ出た。

いつも四人でいる、あの大きな木の下に行こうと思いそこへ行くと、先客がすでにいた―――ジェームズだった。

彼はぐっすりと熟睡していてシリウスが近付いても目を覚まさなかった。

こんな所で寝るなよな…、と自分のことは棚に上げといてシリウスはジェームズの寝顔を暫く眺めていた。

いつもの小憎たらしい笑いがなく、少年では育ちすぎた青年では幼すぎる顔つきだった。

 

(もっとまともな性格だったら、今以上にモテるんだろうにな)

 

シリウスにそう思わせるくらい、ジェームズだってなかなかの容姿の持ち主だった。

 

 

 

シリウスはジェームズの手元に絵本があるのに気が付いた。

金髪で水色の目の少女が猫と会話している絵―――『不思議の国のアリス』だ。

シリウスはその話を一度リリーから聞いたことがあった。

アリスという少女が不思議の国へ行き、そこで懐中時計をもつウサギやチシャネコ、

トランプの兵など出てきて、最後にはハートの女王と出会い、彼女に追われながら現実の世界に戻るという話だ。

こいつが絵本っていう趣味かよ、とシリウスはにやりと笑いジェームズの手から絵本を取り上げた。

するとシリウスは地面から足が離れる感覚に襲われた。

シリウスは頭からまっ逆さまに絵本の世界に落ちていった―――

 

06/09/12

 

 

 

 

 

鹿→百合→狼→犬→鹿 〜THE☆エンドレス〜

 

「シリウス、」

リリーは夜遅くの談話室に一人でソファに座ってクッションを抱え込み、何時帰ってくるかわからない愛人を待っていた。

「リリー…珍しいな、俺に話しかけるなんて」

「あなたと話そうとしたらいつもポッターが纏わりついてくるでしょう?」

シリウスは苦笑した。

「そうだけど…あいつの気持ちもわかってやってくれよ」

 

馬鹿だ、とリリーは思った。

何で自分のことを本気で好きになってくれない相手にそこまで優しくなれるのかがわからなかった。

 

「それよりね、シリウス」

そんなことより本題だ、とリリーは最初に話しかけた言葉に戻る。

シリウスは真っ直ぐにリリーの目を見据えた。薄灰色の瞳が暖炉の炎で赤や金に変わる。

「私、あなたにとっていい話があるの」

「いい話?」

「そう。あなたとポッターを両思いにさせる話」

そこでシリウスの目が微かに見開いた。リリーはその些細な変化を見逃さなかった。

「考えるのは簡単よ。私に振られたポッターをあなたが捕ればいいんだから」

そしてシリウスを捕られたリーマスを私が捕るの、とリリーは心の中で付け足した。

シリウスは動揺しているようだった。目をリリーと合わすことが出来なくなっていた。

 

「そんなの、ムリだ。絶対」

「どうしてそう言い切れるの」

「ジェームズは君にゾッコンなんだ。あいつは梃子でも動かないよ…薬とか使ったら別かもしんないけど…」

「それよ」

「え?」

「薬を使えばいいじゃない。その方が楽だわ。あなたとポッターは死ぬまでラブラブよ」

 

シリウスはこの時、なんでここまで自分とジェームズをくっつけたいのか疑問に思った。

リリーの本当のねらいを知らずに―――

 

06/09/15