僕としたことが───

ジェームズは悔やんだ。

 

───シリウスから目を離すだなんて……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日は12月31日、一年で最後の年。そしてジェームズやシリウスがこの学校で過ごす最後の年明けだった。

最後というだけであって、グリフィンドールの七年生はほとんど学校に残り、飲み食いをし、ゲームなどして大いに騒いでいた。

当然、悪戯コンビは輪の中心にいてみんなを盛り上げる。

しかし、ジェームズが他の友人達に絡まれている時、シリウスは忽然と姿を消していた。

何処にいても目立つ彼が誰にも気付かれずに消えたのだった。

シリウスが寮を出ていったのはジェームズが気付いた直後なのか、それとも随分前なのかさえわからなかった。

もちろん、他の寮生は気付きもしなかった。ジェームズは絡んでくる寮生から離れて寮部屋へと向かった。

───もしかしたら眠くて寝にいったかもしれない、と思ったからであった。

突然態度を急変したジェームズに、そこで寮生は気が付いた。

シリウスがいない、と。

彼ら二人がこの宴会から抜けたら盛り上がりも半減する(女子のテンションがすこぶる悪くなるのだ)が、

二人が言うことを聞くのはお互いだけであって、凡人の自分達のことなんか気にもしないと寮生たちは知っていた。

だから二人に構わず、今年最後の日を楽しんだのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

寮部屋にシリウスがいないことがわかると、ジェームズは透明マントとローブを引っ掴み寮から抜け出した。

ジェームズにはシリウスの居場所に検討がついていた。

それでなくても足は勝手にそちらの方に進む───ホグワーツで一番高い展望台へと。

急で長い階段を疲れない程度に上る。着いたところで息切れなんかしてたら格好悪い、と思ったからであった。

上に上るに連れ寒さが身に染みてくる。息を吐くと白い煙となった。

 

 

(マフラーと手袋も持ってくるんだった)

気紛れな黒犬の為に、と少し後悔した。

 

 

階段を上りきり、古びた木製の厚い扉を押す。ギィと扉は軋み、開けた隙間から外の冷気が顔を刺した。

空気が澄んでいて満天の星空の下に、シリウスは両手をポケットの中に突っ込んでこちらに向かって笑いかけていた。

彼は部屋にいた時と同じ格好で、かなり寒そうだった。頬は寒さでピンク色になっている。

シリウスは右ポケットから銀色の懐中時計を取り出し時間を見た。

 

 

「意外と早かったな」

「………シリウス」

ジェームズは、はあぁぁと長い溜め息を吐き愛しい相棒の名前を呼んだ。

 

 

「何で急に寮を抜け出したの?そんな薄着で」

ジェームズはシリウスに近付き、着ていたローブの中で彼の肩を抱いた。

あったけぇ、と嬉しそうに言いながらシリウスはジェームズに寄り添った。

 

「だってさ、今年最後の日は二人で祝おう、って言ったじゃないか」

シリウスはにやりと笑った。あぁそうだった、とジェームズは去年のこの日を思い出した。

 

 

 

 

 

あの日はジェームズの家で年を明かした。

丁度、去年から今年になる時にシリウスが「来年も二人で祝おうなっ!」と言い、ジェームズは快く了解の返事をしたのだった。

 

 

 

 

 

「まさかあんなに人が残るとは思わなかったよ」

シリウスは星空を眺めながら溜め息混じりに言った。

それは君目当てで残る大勢の女子を狙う大勢の男子がいるからだよ、と心の中で呟いた。

 

「でも、今は二人きりだよ、シリウス」

 

シリウスの肩に回している手の力を強くした。

彼は目線を眩く光る星たちから、こちらもきらきらと光るヘーゼルの瞳に向けた。

ジェームズはシリウスにゆっくりと顔を近付けた。

が、シリウスはジェームズの眼鏡に息を吐いてそれを曇らせた。

ジェームズは慌ててシリウスから離れ眼鏡を外した。シリウスはそれを見てケタケタと笑った。

 

「……何で笑うの?」

「いや…ちょっとお前の反応が面白くって…」

 

まだシリウスはくすくすと笑っていた。

あんまり面白くないジェームズは、今だ笑うシリウスの唇に噛み付くようにキスをした。

シリウスは驚きで目を見張ったが、直ぐにゆっくりと瞼を下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴーン ゴーン ゴーン…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然の音にキスに夢中になっていた二人は唇を離し、至近距離でお互いの瞳を見つめ合った。そして辺りをゆっくりと見回す。

鐘は十二回のベルを鳴らして木霊し、消えた。

 

「「あ」」

二人の声がハモる。ちらちらと雪が降ってきたのだ。

「ホワイト・クリスマスならぬア・ホワイト・ニュー・イヤーだな」

シリウスが呟いた。

 

「シリウス、」

「ん?」

「愛してる」

「え…?」

「今年初めて君に贈る言葉だよ。大事にしときなさい」

ジェームズは厳かに言うとぺろりと舌を出した。

「ただ言いたかっただけだよ」

だから気にしないで、とジェームズは言おうとした。が、

「俺、も…っ」

「?」

「…愛、して、る、から…」

シリウスの頬は寒さで赤くなってはいなかった。

ジェームズは喜んでシリウスに抱きつき、羽のようなキスを彼の頬に落とした。

 

 

 

 

 


す、砂吐き…ΣΣ(゜□゜;)

06/12/31