3月10日―――そう、それはムーニーことリーマス・ルーピン、すなわち僕の誕生日なわけだ。
人狼になってからというもの、僕は楽しい誕生日を迎えたことはなかった。
だが、この学校に来て―――ジェームズ、シリウス、ピーターと出会ってからは少しは楽しく迎えられると思った。
だがしかし、神様とは意地悪なもので、僕の十三回目の誕生日はちょうど満月であった―――
叫びの屋敷に行く時に玄関でいつものメンバーと他愛もない会話をしていた。
その話題はだんだんと僕の誕生日に反れていった。
「明日はリーマスの誕生日なのに…。一緒にいられないなんて寂しいね」
ピーターが溜め息混じりで言った。
「仕方がないよピーター。満月がくるのは誰にも止められないもの」
誕生日を迎える張本人である僕が彼を慰めた。
「…俺達だって努力したんだぜ。だけど、さすがの俺達でも満月の日をずらすことはできなかった…」
シリウスが冗談で言ってるのか本気で言ってるかは僕にはわからなかった。
いくら君達でも月を自由自在にするのは無理でしょ!と心の中で突っ込んだ。
「それじゃあ僕はもう行くね」
と言って名残惜しげに別れ、暴れ柳へと向かった。
途中、「あんま無理すんなよ」とか「生傷増やすなよ」とか聞こえた。
僕は、ただ純粋に僕の誕生日を喜んで祝ってくれる親友がいてくれるだけで十分だった。
今宵も断末魔のような叫び声がホグワーツの上空を木霊する―――
突然目が覚めた。
少し頭を動かし窓に目をやると朝日が入り込んできていた。
「もう朝か…」
気怠い身体をそのままベッドに預けていたかったが、
昨日の会話を思いだして、あの三人の顔が急に見たくなった。
僕は身体を起こし、予備の服を着て下の階に向かった。
階段の半ばまで降りると何やら物音がした。
それも誰もいないはずの部屋から(誰もいないのは当たり前だが)。
―――まさか村の子どもたちじゃ…。
慎重にその部屋の前まで行き、そっとドアを開けた。
バサッ
「!!!???」
何かが僕の顔を覆った。それは何かふわふわしていて暖かいものだった。
その物体を確認する前に僕はそいつのせいでひっくり返り、開けたドアは勢いよく閉められた。
―――なんてヒドい朝なんだ…!
今度はバンッと威勢良くドアを開けた。
次に来るであろうと考えていたふわふわを避けられるよう構えていたが
何かが破裂(と言うよりはむしろ爆発)したような音に出迎えられ、
またひっくり返りそうになったが辛うじてその場に踏み止どまった。
「一体こんな朝っぱらからなんなんだよっ!!?」と叫ぼうと思っていた頭は
部屋の中の光景を見て完全にフリーズしてしまった。
「「「Happy
birthday Moony!」」」
そこには僕の一生涯の友達、ジェームズ、シリウス、ピーターがいた。
あのふわふわはジェームズの梟だった。今はシャンデリアの上で自分の羽に頭を埋めて寝ていた。
僕は部屋を見渡した。そこは以前の寂れた様子がなくなり、グリフィンドールカラーに統一され、
中央にはどこから仕入れたのかグランドピアノが居据わっていた。
さっきは気付かなかったがシリウスの手にはバイオリンが握られていた。
大砲のような音を出したクラッカーを手にしていた三人は互いに顔を見合わせてにやりと笑い、
代表としてジェームズがおほん、と一つ咳払いをした。
「えー、これから『リーマス・ルーピン生誕十三周年記念パーティー』を開催したいと思います!」
イェーイ☆とシリウスとピーターが煽った。
「―――まずはジェームズ&シリウスからお送りします、愛しのミスタームーニーに捧げる曲…」
そう言ってジェームズはピアノのイスに座り、シリウスはバイオリンを構えた。
ピーターは二人のやり取りに目を向けていた僕を一番豪華なソファへと導いた。
二人の演奏は正に一心同体、影と形であった。
初めて聞いた曲だったが、たぶんマグルの曲で、リリーの御墨付きであることは容易に察しがついた。
二人は演奏し終えると大袈裟にうやうやとお辞儀をした。僕はそんな二人に盛大な拍手を送った。
「すごいや二人とも!息ピッタシ!」
「そりゃあ、あんなに合わせたんだから…」
ねー、とジェームズがシリウスにわざとらしい笑みを向けた。
なんだよその気持ち悪い笑いは!とシリウスが怒った。
「…こいつったらなかなか僕と合わせようとしなかったんだよ。これだから自己チューは…」
「っ!お前だって…!」
シリウスとジェームズは睨み合った(だけどジェームズは楽しそうだった)。
「あのぉ〜…」
と、ピーターがおずおずと会話に入り込んできた。
「僕からの発表もしたいんですけど…」
「ホント!?早く見して!」
僕の反応が予想以上だったのかピーターは、二人より大したことないけど…と言って顔を赤くした。
ピーターは、マグルで言う『マジック』を披露した。
トランプの絵柄や数字を当てたり、コップの中にあるコインを消したりした。
ただのハンカチがステッキになったのなんか、まるで本当に魔法を使っているようだった。
僕はジェームズとシリウスにやったのと同じくらい盛大な拍手をした。
二人もマジックを初めて見たのか、目が点になっていた。
ピーターのマジックが終わってからは朝から豪華な食事となった。
ホグワーツのキッチンからくすねてきたものやハニーデュークスのお菓子などが
テーブルの上に広げられていた。
中でも一番僕の目を引いたのは超ビックサイズのまあるいチョコレートケーキだった。
ケーキの上にはフルーツが沢山のっけてあり、その真ん中にある板チョコには金の文字で
『Happy birthday Moony!』と書かれていた。
この文字から判る通りだとしたら、このケーキの作成者は、
「シリウス、このケーキ君がつくったの!?」
「ん。気に入ったか?」
僕は、こんなに甘い物がたくさん食べれるなんて…!と感激した。
もちろん、親友達がこんな素晴らしいパーティーを開いてくれたことにも。
「あぁ…本当にありがとう…言葉に表せないくらい嬉しいよ…!」
僕はこの学校に来て何回目かわからない三人への感謝の気持ちでいっぱいになった。
「…ありがとう、友よ―――」
去年からずっと書きたかったリーマスの誕生日ネタです(* ̄▽ ̄*)
幸せな学校生活を送ってくださいリーマス氏!!
06/03/10