五月だというのに初夏並みの暑さ。暑くて暑くて喉がカラカラだ。
水を飲もうとベッドサイドのテーブルに行くと先客が一人―――我が悪友、ジェームズ・ポッターがいた。
彼はグラスに水を注いでいるところだった。
「ジェームズ、早く自分の分の水注いでくれ。ついでに俺のも注いで」
はいお願い、とグラスを彼につき出した。
「お願いする分際で随分と態度がデカいじゃないか」
「お願いしマス。ジェームズ君」
「よし、じゃあ注いで上げよう―――と言いたいところだけどもう君の分ないや」
「はぁ!?」
水は全てジェームズのグラスに注がれていた。
「お前、半分俺に分けろよ!」
グラスを彼の手から奪おうとしたが、その手は空を切ってばかりだった。
「俺だって暑くて喉カラカラなんだぞ!ずるいぞっ!」
「あぁもう、わかったよ」
そう言って彼はグラスの水を飲んだ。
こいつ、そこまでして俺に水を飲ませない気かと思った瞬間、彼は両手で俺の顔を包んだ。
「?何すん…」
言葉が出なかった。いや、出せなかった。
何故ならジェームズに口を塞がれたからだった。唇を割られ水が口に入り込んでくる。
ビックリして水が肺に入りそうになったが何とか飲み込んだ。
次から次へと水が入り込み、飲み損なったものは顎を伝ってぽたぽたと床に落ちた。
苦しくなりかけたころ、ジェームズも口の中の水がなくなったのか唇を離した。
「はぁ…」
暑さと酸素不足で足下がふらふらした。
「おッと」
ジェームズが身体を支えてくれた。
「…お前、」
「ん?」
「普通にグラスに分けた方が早いんじゃね…?」
「君が一刻も早く飲みたいって言ったから」
彼はにやりと笑った。
「そうは言ってないぞ!」
「いいじゃないか、飲めたんだし」
「納得できねぇー」
もうどんなに喉が渇いてもジェームズには何も求めないと思ったシリウスだった。
結局鹿と管理人(ぇ)しか得をしていない。
06/07/31