素直になれていいな。
「シぃーリウスっ♪」
がばちょ、と珍しく机に向かってレポートを書いているシリウスの後ろから首にジェームズが抱き付いた。
「バっカ暑いんだよっ!字がぶれたじゃねぇーか!!」
容赦なくシリウスの拳が飛ぶ。
僕なら一発目から当たりそうなそれをジェームズがひょいひょい躱していく。
「全然当たんないねぇシリウス」
あぁ何でジェームズはいつもシリウスを怒らせるようなことを…。
「〜〜〜っ!!いっぺん俺に殴らせろっ!」
「ヤだね。シリウスが本気で殴ったら痛いってもんじゃないもん」
じゃあそういうことするの止めればいいじゃん、と僕は心の中で突っ込んだ。
「じゃあ急に抱き付くなよっ!」
シリウスは僕の心のツッコミをジェームズに言った。
「いーやーだー」
「ジェームズっ!」
シリウスは、僕だったら立ち竦んでしまうくらいの鋭い目付きでジェームズを睨んだが、
睨まれた張本人はケラケラと笑ってる───ジェームズにはシリウスの睨みは通用しない。
シリウスは無駄だと悟ったのか軽く溜め息を吐いた。
「…なんで、そう、男の俺に引っ付くんだ…?」
さっきの睨みはどこへやら困ったような顔をして言った。
「だって僕はシリウスが好きだから」
事も何気にジェームズが言った。
「だからシリウスにかまってもらいたくてちょっかい出したくなるんだ」
そう言ってジェームズはにっこりと、シリウスにしか見せない笑顔を向けた。
僕は、その言葉と笑顔を向けられたわけではないのに顔が熱くなった。シリウスは僕以上に顔を真っ赤にしていた。
「……あと五分で書き終わるから、それまで待てるか…?」
シリウスは顔を真っ赤にしたまま床を見つめて言った。
ジェームズはぱっと顔を輝かせて「もちろんっ!」と即答した。
普段大人っぽい、皮肉屋のジェームズがこんなに幼い子どものように素直になるのはシリウスの前だけだ、
とこの二人の新たな事実を目の当たりにした。
このお題の中で一番難しいかも…。
だって二人ともあんまり素直とは言えない(笑)
06/08/10