頭良くていいな。

 

 

 

今日は僕にとって最悪の日だ───テストの返却日なのだ。

そして言うまでもなく僕は三人に比べて頭が───かなりと言ってもいいほど───悪い。

僕が何故この三人の中にいるのかが未だに不思議なくらいだ。

特にジェームズとシリウスは学校の中でも群を抜いている───二人は所謂『天才』だ。

そしてこの二人は今、賭けをしている。何でも負けた方は勝った方の言う事を、何でも一つ聞くとか。

僕なんて点数が低すぎてみんなに言えないでいるのに…。

 

 

 

 

「見よジェームズ!百点満点中の百五十点だ!」

シリウスはジェームズの目の前に解答用紙を突き出した。ジェームズは悔しそうにそれを睨む。

「…僕だって、百点満点中の百十五点だぞ…」

普段ならABC順で、シリウスが先に解答用紙を返されるのだが、

先生によってはシャッフルしたりその日の出席番号の人から返すことがよくある。

『闇の魔術に対する防衛術』では出席番号の一番最後から返されたので、ジェームズが先に返されたのだ。

 

「シリウスは『闇の魔術に対する防衛術』が得意だよね」

僕はシリウスを尊敬のまなざしで見つめた。そんな僕は…赤点ゾーンだった。

「『闇の魔術に対する防衛術』だけ、ジェームズは今まで一度もシリウスに勝ったことないよね」

そう言うリーマスはいつも通り平均点プラス二十点で、クラスの中でも上位だった。

「───っ飛行術なら僕は誰にだって負けないよっ!!」

「そりゃそうだろうよ。クィディッチ二年目にして誰もが認める名シーカーが、

 選手でもない俺に負けたらジェームズ・ポッターの名が廃るぜ」

「褒められて喜んでいいのか…」

「喜べよっ!俺がわざわざ褒めてやってんだぞ!」

「……………」

「まぁまぁジェームズ。今回のテストの中でもシリウスに勝ったのがあるじゃないか」

リーマスが励ました。

「そうそうっ!魔法史と天文学で勝ったじゃないか」

シリウスはにやにやしながら言った───これは完全に嫌味だ。

勝ったと言っても二教科合わせて十点だった。五十点の差は埋まらない。今回のシリウスの調子は絶好調だ。

だからってジェームズは三番手(もちろんリリーだ)とは百点差だ。

 

「次元が違うよぉ〜二人ともぉ…」

 

僕は今まで返却されたテストの無惨な結果を思い出し、大きな溜め息を吐いた。

何で同じ人間なのにこうも差がついてしまうのだろう…。頭良い人って得だよなぁ…と僕は考えながら、

前の席で二人が言い合っているのを眺めていた。

 

「───次は魔法薬だろ?またシリウスの勝ちじゃないか」

「スラグホーンの贔屓で勝つと思ったら大間違いだぞ。

 俺の実力にプラスアルファーとしてスラグホーンの贔屓が足されるんだ」

「その『プラスアルファー』で僕は負けるんだろ」

「残念だったなジェームズ君。諦めて負けを認めなさい」

かっかっかっ、とシリウスは笑った。そんなシリウスを横目で恨みがましくジェームズが見ていた。

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで、結局シリウスが初の首席、ジェームズが次席ということで落ち着いた。

「さぁてジェームズ君。心の準備はできたかな?」

シリウスはにやにやしながら談話室のど真ん中の椅子に座って足を組み、高慢ちきな顔でジェームズを見て言った。

そんな姿も様になって羨ましい。

「………」

ジェームズは本当に嫌そうな顔をしていた。

 

 

「じゃあ早速俺の言う事を聞いてもらおう!

 …って言いたいトコだけど、実際聞いてもらうことないんだよね、俺」

 

「「えっ?」」

 

 

僕とジェームズの声が重なった。シリウスはそれに構わず話し続けた。

「俺は、初めてジェームズ抜かして首席になっただけで満足だし。お前も嫌そうだからこれでいんじゃね?」

そしてシリウスはとびきりのウィンクをした。

何人かの女生徒の悲鳴が聞こえた。僕も顔が無意識に赤くなった。

 

「…シリウスっ!」

ジェームズは顔を輝かせ、みんなが見ている中シリウスに抱き付いた。談話室にどよめきが走る。

「君はなんていい奴なんだ…!

 …僕なんて、自分が勝ったらシリウスにあんなことやこんなことをしようと思ってたのに…っ!」

「あんなことやこんなこと?」

シリウスの眉根が寄った。

「まぁ今となっては関係ないことさ」

ジェームズは急いで付け足した。

そうか、とシリウスは言ったがまだ怪訝そうな顔をしていた。

 

「さぁみんな!シリウスの初☆首席に乾杯だっ!バタービールやお菓子を用意しよう!」

ジェームズはシリウスからやっと離れ、よく通る声で談話室にいる全員にそう告げた。

「イェーイ☆」

「そうこなくっちゃ!」

と寮生は歓声を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

───宴の最中に、ジェームズとシリウスがこっそり抜け出したのを知っているのは僕とリーマスだけだった。


my設定ではシリウスは『闇の魔術に対する防衛術』がジェームズよりも得意です。だから学年トップ。

だけど魔法史と天文学はダメ(眠いから:笑)ジェームズはオールマイティーなかんじ。

鹿犬は学年ダントツトップでその下にリリースネイプと続く。そしてまた間が開いてぞろぞろと…。

この辺りの設定はかなりこまいです( ̄▽ ̄;)

06/08/16