シリウスは眉をハの字にして僕を見つめていた。

僕は彼の頬を伝う幾筋もの涙を舐め取った。

 

「ジェー…?」

「うーん、しょっぱいなぁ」

「お前…?」

 

彼は僕の違いに気付いたらしい。

表情が花咲くように変わった。

 

「ありがと、シリウス。全部思い出せた」

 

そう言い終わったやいなや彼は僕に飛び付いてきて、僕の肩に顔を埋めた。

 

「よかった…」

 

溜め息を吐き混じりに彼は言った。

もう離すまいと背中に腕を回された。

 

「僕が医務室で目覚めた時にも同じコト言われたな…」

 

僕もそれに答え彼の背中に腕を回し、二人はしっかりと抱き合った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱり少しくらい我儘なジェームズの方がいい」

 

シリウスがぽつりと呟いた。

 

「みんな記憶を忘れたジェームズの方がいいって言ってたけど…

 俺や、リーマス、リリーは絶対そうは思わない。

 悪戯しない、我儘も言わない、先生の指示に素直に従う優等生ジェームズは正直言って薄気味悪かったよ」

 

シリウスは僕の肩に埋めていた顔を上げ、にやりと笑った。

目元がほんのり赤くなっていたが軽口を叩けるくらい元気になったようだった。

シリウスは僕から離れ、石煉瓦の塀に両手をつき夜の星空を見上げた。

相変わらず星はピカピカと輝いている。

 

 

「そういえば…どうして君はここに居たの?」

 

僕はシリウスの隣りに並んで同じように空を見上げた。

 

「―――なんでだろ?」

「…わからないの?」

「うーん…ただ足の赴くままに来ただけ。来てみると星がすっごい綺麗でさ…

 それ見てたらなんか無性に空しくなってきて、こう、顔を伏せてた」

「僕が居なくて、寂しくて泣いてるのかと思ったよ」

 

冗談で言ったのに、そうだったかもしれないと彼はあっさり肯定した。

僕はぽかんと口を開けて彼を見つめた。

シリウスはそれが可笑しかったのか、くすくす笑った。

 

「お前こそ、どうして俺がここに居るってわかったんだ?」

「僕も君と同じだよ。身体が勝手に動いたのさ」

「記憶を忘れても俺が居る所がわかるんだなぁ」

 

とシリウスは感心した。

 

「僕らは運命共同体なんだよ」

「なんだそりゃ」

 

と彼は笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

決して僕らは離れられない。

僕と彼は二人で一つ、僕は彼と共に人生を歩んでいるのだから―――


やっとこ終わりました!最後はあっさり短く。

これで二人の愛も深まった…のか?(笑)

06/07/22