「ごめんなさい」

ふいに口からこぼれた。

 

 

* * *

 

 

 

今日一日は星座占いなら12位に値する最悪のbad dayだ(そんなものははなから信じないけど)。

まず寝坊して1時間目の魔法薬の授業に遅れて、罰として放課後教室の掃除を魔法ナシ(!)でするよう命じられ、

しかも今日はたまたまスリザリンとの合同授業だったので先生が見てない隙を見計らっていちゃもんをつけられ、

それに乗せられた俺がキレてスリザリン生に殴りかかろうとしたところをまた先生に見つかり、

今日だけだった掃除が1週間に延び、落ち着いて座った俺に隣りに座っていたジェームズが

「君はいつになったらその癇癪癖が治るんだい?」

と言われて治めていた怒りがまた沸き上がり、右頬をさっきスリザリン生を殴れなかったぶん、

思いっきり殴ってしまって教室を出てきてしまった。

 

 

 

 

 

「アイツは悪くねぇのに…」

なぐってしまった。しかもグーで。

なんでこんなに自分は短気なんだろう、とこの学校生活でどれほど思ったことか。

そのせいでどれほど親友達に迷惑をかけたことか。

「やっぱり、アイツだけには謝ろう」

一番の親友で、相棒のアイツには。

と思った矢先、「――シリウスっ!」

ジェームズが俺めがけて走って来た。

「どうしていきなり教室出てったの!?」

「あー…ことの成り行き?」

遠目からは判らなかった頬の腫れが近くに来たせいで余計強調された。

 

 

目が合わせられない。

『ごめんなさい』

と言うだけなのになぜか言えなかった。

 

 

 

 

「頬…痛くねぇ?」

沈黙に耐えきれなくて言った言葉はかすれていた。

「君の愛の鞭は凄まじかったよ…」

声からはアイツの表情は読めなかった。

我慢出来なく、思い切って顔を上げるとそこには優しい目をしたアイツがいた。

 

 

「ごめんなさい」

ふいに口からこぼれた。

 

 

 

 

 


初☆鹿犬

06/01/05