振り返ると後ろに立っていたそいつは、驚く俺を見て愉快そうに笑って言った。

 

「シリウス――」

 

 

* * *

 

 

 

 

――勝った。

ジェームズがスリザリンのシーカーの鼻先でスニッチを掠め取った。

グリフィンドール生からはどっと歓声がわいた。俺も嬉しかった。

何よりも2年生であるアイツがスリザリンの体ばかりの上級生からスニッチを取ったのが最高だった。

―――クィディッチをやっているジェームズは格好良かったが、なんだか遠い存在に見えた。

 

その日の夜はグリフィンドール総出で宴会が行われた。

ジェームズを含めた選手全員はもちろん中心で盛り上がっていたが、

俺はその騒ぎの中心には行かないで人がいない窓際でバタービールを飲んでいた。

 

 

「めずらしいね、君が端にいるなんて」

リーマスが少なくなっていた俺のコップにバタービール足しながら言った。

「俺だって、一人静かにしていたい時があるんだよ」

「そう。それにしてもさっきから騒ぎの中心を横目で見ているようだけど?」

ジェームズとか?と最後の言葉で俺は何も言い返せなくなった。

これは正直に言ったほうがいい。

「…なんか遠いなぁ、って」

「ジェームズが?」

こくりと頷いた。

「今日の試合見て…なんか俺だけそのまま取り残されたってゆーか…

ジェームズだけがどんどん先に進んで行くような気がして…」

リーマスは意外にもクスリと笑っていた。

「…だそうだよ、王子様」

振り返ると後ろに立っていたそいつは、驚く俺を見て愉快そうに笑って言った。

 

「シリウス――」

 

急に抱き締められた。

突然のことで何がなんだかわからなくなったが、恥ずかしさのあまりにジェームズを突き飛ばした。

それでも笑っているやつ。

 

「君は――」

ただ、目だけは真っ直ぐ俺を見て。

 

 

 

 

 

君は――僕の虜になったんだよ?

 

 

 

 


気づいてるジェーと気づかないシリとその中立を保つリーマス

06/01/05