彼と初めて会ったのは彼が五歳の時、彼の母の誕生日パーティーに招待された時だった。

主催者が簡単に挨拶をし、それから分家の子どもである姉のベラと私は今日の主役に挨拶をした。

(ナルシッサは家でメイドたちと『お留守番』だった)

彼の母は彼女自身がその容貌を自慢できるぐらい美しかった。

しかし、高慢ちきな態度と冷めた目付きはこの家でも一番だな、と私は思った。

 

ブラック夫人に挨拶を済ませた後、ベラは私の脇腹を肘で小突いてきた。

「何?」

ベラは数メートル先に一人でぽつんと壁に寄り掛かっている小柄な男の子を顎でしゃくった。

「叔母様の嫡男ね…パーティーに出ているところなんて初めて見たわ」

そう言ってベラは少年の粗探しでもするかのように見つめていた。

 

艶のある絹糸のような黒髪に陶器ような白い肌。形の良い唇。

切れ長の、だけど幼さが目立つ目元に、光の加減で白にでも銀にでもなる不思議な薄灰色の瞳…彼は彼の母にそっくりだった。

 

内心、どきりとした。

彼の容貌の美しさに、ではなくその不思議な瞳に。

一瞬彼の瞳がキラリと光ったのだ。

それは炎のように、獲物を捕らえようとする猟犬のように───天空で輝く『シリウス』のように。

その瞳の中に宿る炎だけは美しいブラック夫人とは似ていなかった。

 

「…男にしておくのが勿体ないわね…」

ベラがぼそりと呟いた。

彼女の言う通り、今の彼ならスカートを履いたら女の子に見える。しかも絶世の美少女。

これは将来女性には困らないなぁ…と内心苦笑した。

 

「ベラはああいう顔が好みなんだ」

「あんたのマグル好きよりはよっぽどマシよ」

「失礼しちゃうわね」

ふん、と顔をベラから背けた。

するとそこには先程まで話題になっていた人物が私たちの前に立ち、じっとこちらを見ていた。

それも唯見ているのではなく、観察するようにじろじろと。私とベラもまたその綺麗な少年をじっと見つめた。

 

「───ナニ?」

何も言わない少年にベラが聞いた。少年はキラリと光る薄灰色の瞳をベラに向けて言った。

 

 

「───あんた、近くで見ると、老けてるな」

 

 

この予想外の言葉に吹き出してしまった。

「ガキに言われたかぁないわぁっ!」

がぁ、と今にも少年に掴み掛かろうとしたベラを必死で抑えた。

 

 

 

 

 

 

 

それにしても驚きだ。

ブラック本家の跡取り息子が従姉に向かって「老けてるな」と平然とした顔で言うのだから驚かないはずはない。

ベラの為にも言うと、彼女はまだ十二だ。彼とはまだ七つしか違わない。

まぁ、確かに彼よりは老けてるが。

 

 

これが彼との衝撃的な初めての出会いだった。

この彼が、私や伯父のアルファードと同じ『反逆者』になることはそう長くはなかった。

 

 

 

 


”blood traitors”を「裏切り者」じゃなくて「反逆者」と訳している人がいて、

いいなぁと思って使ってみた(* ̄▽ ̄*) カッコイイよ「反逆者」!

06/11/04