クリスマス・イブ

 

 

ホグワーツではクリスマスの雰囲気になっていった。

クリスマス休暇のため、居残り組の名簿が回ってきた。

僕はクリスマスにまた「あの姿」になるため、名簿に名前を記入した。

むろん、人狼にならなくてもわざわざ家に帰って親に迷惑をかけたりはしない。

僕はざっと居残り組みリストを見た。

やはり、クリスマスは家族と過ごす人が圧倒的に多く、

居残りする人は僕を入れて5,6人だった。

その中にジェームズはいなかったがある人物はいた。




S.Black


グリフィンドール生は僕とシリウスの2人だけだった。

 

 

クリスマス・イブ。

生徒が玄関ホールでごった返す。今日は帰省する日だ。

僕はそれを遠巻きに見ていた。

向こうではジェームズとシリウスが話している。

「シリウスは僕がいなくなってホントは寂しいんだろ?」

「バーカ。お前がいなくなってせいせいするよ」

「新しい悪戯ぐらい考えとけよ!」

「それはお互い様だろ?2人で考えなきゃ意味ねーじゃん」

「それもそうだなぁ」

と言って2人で笑っていた。

「じゃあそろそろ行くね。僕がいなくなっても泣いたりするなよー」

「お前もな!」

と言ってシリウスはジェームズに大きく手を振った。

シリウスがくるりと振り返り僕を見つけた。

やばい、と思ったけど遅かった。

「リーマス!お前も残んの?」

と、言いながらシリウスが駆け寄ってきた。

「うん・・・そのつもり」

僕はシリウスと離れようとしたけどうまい口実が思いつかない。

今、考えてみるとクリスマス休暇中はずっと2人だけだ。

僕は仕様がなく、2人でグリフィンドール寮へ戻ることにした。

その間シリウスは僕に色々な話しをした。

悪戯のこと、先生のこと、悪戯のこと、セブルスのこと、悪戯のこと・・・。

最初の列車の中の彼の無口ぶりから考えるとかなりの変化だと思った。

グリフィンドール寮がもう目の前に来た時、

シリウスは突然会話を止めて、窓の外を見つめた。

「雪だ・・・」

僕も窓の外を見た。ちらちらと雪が降り出していた。

「雪だ!リーマス外行くぞ!!」

「えっ!!?」

シリウスは嬉しそうに言って、人の意見を聞かずに

僕の腕を掴んでもと来た道を戻って行った。

 

 

あたり一面銀色の世界。

白い雪の絨毯がもう地面を覆っていた。

僕は寒いのが苦手なのでロータリーのベンチに腰掛けて

犬のように走り回っているシリウスをじっと見ていた。

よっぽど雪が降ったのが嬉しいらしい。

走り疲れたのかシリウスが僕のほうに向かってきて、隣にどかっと座った。

寒さと走り回ったせいか、頬がほんのりピンク色だった。

そして2人で黙って、ちらちらと降る雪を眺めていた。

何分かした後突然、シリウスが僕に話しかけた。

「・・・俺さぁ、雪ん中走り回ったり、触れたりすんのほとんど初めてに等しいんだよね」

「え・・・?」

 

 

ほら、俺ってあんな家だろ?

だからってゆーのがほとんどだけど、家から出してくんなかったんだ。

まぁ、俺があまりにも悪ガキすぎたってのもあるけどさ。

こうやって、同い年の人と話したこともなかった。

話すのは年の離れた従姉か、俺のゆーことを聞かねー老いぼれ下僕妖精だけさ。

おい、笑うなよ。ホントに俺のゆーこと聞かないんだって!俺も一様主人なんだぜ?

あとは・・・弟かな。あ、弟がいるのはジェームズにも話したことがないんだ。

内緒だぜ?あいつ、俺に弟いるって知ったらうるさそうだから・・・。

 

ホグワーツに入学するって聞いたときは俺、ホントに嬉しかったんだ。

やっとこの家から出られる、って。

そんで、列車ん中でお前らに出会った。

だけど、やっぱり・・・名前は言いたくなかった。

だってせっかく出来た初めての友達が自分の名前聞いた途端、

俺を嫌いになるんじゃないかって考えてた。・・・あんな家出身だしね。

だけどお前らは違った。それでも俺と友達でいてくれた。

俺の組み分け終わった後、ジェームズがデケー声で俺を呼びとめたろ?

おい、また笑ったな!ここは笑うとこじゃねーよ!!

・・・俺、あん時ジェームズが、「君は僕を騙してたのか!?

君なんかがなんでグリフィンドールに入るんだ!!」ってゆーと思った。

なのに・・・あれだ。

「君なんでそんなカッコイイ名前なのに僕に隠してたの!!?」だもんなぁ。

拍子抜けするよ、まったく・・・。お前、笑いすぎだぞ・・・。

 

 

「俺、そん時からこの3人だけは絶対何がなんでもずっと親友でいるって決めたんだ」

シリウスが唐突に言った。

「俺はなんとなくなんだけど・・・友情ってのがわかったような気がする。

人を外見とかで判断しないで、中身で判断してくれること・・・友情じゃなくても言えることか」

「大半の奴らは俺を『ブラック家の後取り息子』って見る。

だけど俺は『ブラック家の後取り息子』じゃなくて『シリウス・ブラック』だ」

シリウスは自分に言い聞かせるように言った。

「そして、お前らは俺を『シリウス・ブラック』として見てくれた。

俺もそうやってお前を見てるよ、リーマス」

僕は目に涙が溜まっている。さっきの笑いすぎではない。

「リーマス・・・俺はお前がどんなんでも『リーマス・ルーピン』として見てる。

お前が俺を『シリウス・ブラック』と見たように。

・・・たとえお前が人狼だとしても」

「・・・っごめん・・・!!!」

僕はシリウスに抱きついて、声を出して泣いた。

3人に嘘をついていたこと、一緒にいたいのに3人と離れていたこと、

そして自分が人狼であること・・・。

いままで心に深く圧し掛かっていたものがどっと溢れた。

「・・・っ僕、ホントは3人と一緒にいたいんだ・・・!

だけど君達が僕を人狼だと知ったらきっと友達じゃなくなるって・・・っ!」

「・・・お前は1人で抱え込みすぎだ。・・・少しは11歳らしくしたらどうだ?」

と言ってシリウスは僕の頭をぽんぽんと叩いた。

いつの間にか、雪は止んでいた。

 

 

クリスマスの次の朝。

僕は人狼になった後の疲れを引きずりながらグリフィンドール寮に戻っている途中である。

僕はマダムポンフリーにことわって、さっさと医務室を出てきた。

疲れてはいるが、嬉しさがある。

僕が人狼とバレてしまっても、シリウスはずっと一緒にいてくれた。

逆に前よりもっと仲良くなったような気がした。

「秘密を分け合うと仲が深まるのはなんでだろう?」

そんな独り言を言って。

 

グリフィンドール寮に着き、部屋へ向かう途中シリウスの笑い声が部屋から聞こえた。

僕が部屋を覗くとシリウスが僕に気付き「おはよっ!」と言った。

「おはよう、シリウス。なんで笑ってたの?」

「あぁ、これさ・・・」

と言って、テーブルの上にあった鏡を見せた。

そこにはジェームズが映っていた。

「ジェっ・・・ジェームズ!!?」

ジェームズが僕に、にやりと笑って手を振った。

「驚いたろ?両面鏡ってゆーんだってよ。

ジェームズがこの対を持ってて話しが出来るんだ」

とシリウスが簡単に説明した。

僕はあることを思い出した。

 

ジェームズに本当のことを言ってない・・・。

 

「シリウス、ちょっと部屋出てくれる?」

なんだよ、仲間はずれか?と文句を言いながら部屋を出て行った。

僕は鏡の中のジェームズと向き合った。

「ジェームズ・・・あの時は勝手に逃げ出しちゃったりしてごめん。

・・・だけど、今なら言える」

僕は深く息を吸って、一息ついて言った。

「・・・僕、本当は狼人間なんだ」

「・・・うん」

ジェームズが優しい目で僕を見た。

「僕も勝手に君のことを調べようとして、ゴメン。

だけど君をその苦しみから逃れさせたかったんだ。だけど・・・」

「うん、無理だったんでしょ?」

あぁ・・・、とジェームズはうなだれた。

「ありがとう、ジェームズ。君は僕を嫌いにならなかった」

だって、それは・・・、とジェームズは言った。

「僕らは親友だよ?人狼がどうした、家がどうしたって話しは関係ないんだよ」

僕はその言葉だけで十分心がいっぱいになった。

僕はあることに気付いた。

「・・・ピーターはどうしよう・・・?」

「僕は休暇明けに教えたほうがいいと思う。出来るだけ早く、ね?」

ジェームズがウインクをした。

「OK」

僕もウインクを返した。

「おい、リーマス早くしてくれ!腹が減ってしょーがねーんだ!!」

シリウスが談話室から叫んだようだ。

「ほら、悪戯坊主が腹減ったとさ。行ってやんな、リーマス」

「ハハ!わかったよ。シリウス今行くよ!」

 

僕は部屋を出る前に振り返って鏡を見た。そこにはもうジェームズはいなかった。

「ありがとう。My best friends」

テーブルの上の鏡に独り言を言って、談話室へと向かった。

 

 

 

 

 

 


やたらまた長すぎ・・・!

もう少しで終ります。長かった。

リーマスの心情の話しが多くなっちゃいます。

やっぱイッチ年生の話しはねぇ・・・。