───わかっている。
シリウスは、ポッターに変な事を吹き込まれてグリフィンドールに入ったんじゃないって。
でもポッターを憎まざるを得なかった。
夏休みに帰省する度に仲が悪くなる母と兄の関係。
望みがない兄の代わりに、と親戚一同が押し付ける『ブラック家』という肩書き。
その肩書きにすら堪えられない自分。
そんな物が心の中でぐるぐると掻き混ざる。
本当は、ここで兄であるシリウスを恨むべきなのだろう。
だけど僕はしなかった───できなかった。
あの家で唯一歳が近く、何時も側にいた人物を僕は憎めない。彼はあまりにも僕に優しすぎた。
しかし、僕の心はぐるぐると掻き混ざる一方で。
そんな時、その心の矛先を向けることができる人物が現れた。それがジェームズ・ポッターだった。
首席でクィディッチのシーカーで悪戯好きで人気者で、シリウスと片時も離れずいつも彼の隣で笑っているジェームズ・ポッター。
シリウスといつも一緒にいるポッターが気に食わなかった。
家では自分の側でいつも微笑んでくれたシリウスがポッターの隣にいて、楽しそうに話している。
ブラック家では絶対に見れない顔、表情。
何でもできる人気者のポッターを僕は入学一日目で嫌いになった。
そしていつの間にか自分の心の闇を彼に向けていた。
わかって、いるんだ。
ポッターは何も悪くない、まだ子どもな自分が嫉妬と不安を彼に押し付けてるって。
だけどそうしないと自分が心の闇に押し潰されてしまう。
『僕を憎みたければ思う存分憎んでいいよ───』
彼の言葉が頭に蘇り、周りの情景が鮮明に浮かび上がる。
『───僕はホグワーツで一番の人気者であり、一番の嫌われ者だから憎む奴が一人増えたからって僕は何とも思わないさ』
傲慢にもそう言い放って、にかっと彼は笑った。
昨日のクィディッチの練習後だった。
たまたまグリフィンドール選手と鉢合わせし、お互い散々罵り合い(主にお互いのキャプテン同士だが)、
去ろうとしたところを、腕を掴まれ止どめられたのだった。
その時の僕は、ポッターに腕を掴まれたことや傲慢な物言いに腹を立てて、
掴まれていた腕を乱暴に振りほどき大股で学校へと戻った。
だけど今考えてみると、僕の心の奥底は彼に見透かされていたらしい。
それを考えただけでも腹立たしいけど。
僕は伸びをして寝間着に着替え、ベッドに入って周りのカーテンを閉めた。
明日はジェームズに糞爆弾を投げてやろう───
これにて終了です。中々自分で書いてても楽しかった(*´∀`*)
実はこの連載で一番書きたかった話だったり。
06/10/22