6月。それは―――ジューンブライド、結婚の季節である。
そして今日は我が親友達の結婚式である。
* * *
俺は仲人という大変な役回りだが忙しい合間をぬって親友達の晴れ姿を見に行くことにした。
部屋の前まで来た時、何故か花婿ではない自分が緊張していた。
「なーんで俺が緊張してんだろ」
なんて独り言を漏らして。
軽くノックをしたら「どうぞー」とリリーの声が聞こえてきた。
ゆっくり扉を開けるとそこにはウエディングドレス姿のリリーが立っていて、俺を見、にこりと微笑んだ。
「キレー……」
俺の頭の中は真っ白けとなった。
―――俺でこんなんだからジェームズが見たらどうなんだよ?
「ジェームズより先に見ちゃってよかったのかなぁ…」
「あら、減るもんじゃないでしょ?」
「いや、そうだけどさぁ…」
リリーはくすくすと笑った。つられて俺も笑みをこぼした。
「まさかあなたとこうやって話せるなんて数年前までは思ってもみなかったわ」
「あぁ…仲が悪かったのは5、6年が一番のピークだったよな。俺達とリリーの」
「リーマスとピーターはその中には入ってないわよ」
俺とジェームズだけってことね…。
「…でも、私とシリウスは最初のほんの一時の間仲良かったよね」
「そうそう!あの頃の俺にとって、君のようなマグルと話すことは初めてで…
君も俺がどーゆー生まれかだってことも知らなかったから気軽に話せた…」
こういうたわいのない話はもう随分としていなかった。
―――こんな時間が一生続けばいいのに…。
「つい先日、ジェームズとお酒を飲みながら今後のことについて話し合ったの」
「…ジェームズが酔い潰れるまで?」
「だってみんなお酒弱いんだもの」
ジェームズも俺も酒には十分強い『ザル』だ。が、リリーはそのさらに上をいく、『底なし沼』である。
「…で、今後のことって?」
「それはもちろんあなたよ、シリウス」
「……はぁ?」
「ジェームズ…すごくあなたのこと心配してたわ。
『シリウスはこの結婚を機会に関係を終わらせようって言ったんだ…。
だけど僕はシリウスと終わらせるなんて微塵も思ってないし、
ましてやシリウスを他の誰かさんに渡そうなんて考えもしない』って」
「考えもしないって…お前ら結婚すんだぞっ!!?」
「結婚は形にしか過ぎないわ」
「いずれ子供だって出来る…」
「『そのコト』についてはジェームズに話してもらって頂戴」
あの花婿にこの花嫁あり。
心配していた自分が馬鹿馬鹿しくなってきた。
―――確かに一週間くらい前にジェームズとそういう話をした。
今日だって忙しくてまともに話せなかったのに―――脱力感で大きな溜め息が出た。
「溜め息つくと幸せが逃げるわよっ!」
バッシーン☆とリリーに背中を勢いよく叩かれた。
―――ったく誰のせいだよっ!!?
バタンっ、と大きな音とともに扉が開いた―――
06/02/04