バタンっ、と大きな音とともに扉が開いた。
「リリーっ!着付けし終わったかい?」
うわっ、よりによって今一番会いたくない奴。
花嫁よりも先に、ジェームズは俺に目がいった。
「シリウス…」
何となく気まずい雰囲気にリリーが両者の間に入った。
「ほらっ!何しんみりしてんのよ。
ジェームズ、まだ『あのコト』シリウスには言ってないんでしょ?
あたしは当分ここには帰って来ないから二人でゆーっくり話し合いなさいv」
―――いいのかよリリー。後押しして。リリーもジェームズが好きなのに…。
ぱたん、と扉が閉じられた。
「シリウス、」
ジェームズが口を開いた。
「僕らの子の名付け親になってくれないか?」
「…へ?」
「いや、だから名付け親に」
―――ナヅケオヤ?
「―――っておいおいちょっ、ちょっと待て!いきなり言われても…。
ってか、そーゆーものはだな、
身内で、財産的に余裕があって、信頼をおける人に頼むもんだろうが」
例えばお前のお父さん、お母さんとか。
「全部当てはまるじゃないか。
君は僕の身内同然だし、金なんて有り余るほど持ってるし、
それに僕が一番信頼しているのは君なんだから」
「でも…」
「僕とリリーの子も喜んでOKしてくれるよ」
「……わかった。引き受ける」
「ありがとう、シリウス」
ジェームズはこれまでにないほど優しく微笑んだ。
ふ、と思い出したことが一つ。
「…お前、リリーの花嫁姿を前にして何も言わなかったな」
最高に綺麗なウエディングドレス姿だったのに。
「あれは君がこの部屋にいるとは知らなかったくて言いそびれたからさ」
知らなかったくせしてどこか気取った言い方だった。
「ちゃあんと後で言ってやれよ」
「わかってるよ」
「ところでシリウス。仕事のほうはいいのかい?」
え、と時計を見るとだいぶ休憩時間を長くしてしまったようだった。
「ワリィ!俺先行くわっ!!」
ばたばたと騒がしくシリウスが出て行った。
「相変わらずアイツはいつ見ても飽きないねぇ…」
くすりと笑ってジェームズが言った。
「…そう思うだろ、リリー?」
バサッ、と布の音がして何処からともなくリリー・エバンス、否、リリー・ポッターが現れた。
―――透明マントで身を隠していたのである。
「そんな姿も綺麗だよ」
「…いつから気付いてたの?」
「君が出て行った時から」
それじゃあ最初から最後までじゃない、とリリーは零した―――ひどく楽しそうに。
「あなた、これであたしとシリウスの会話聞いてたのね?」
「君が今していたように息を殺してね」
二人見つめ合って微笑を漏らした。
ジェームズとリリーが窓辺に寄ると、そこからせっせと働く正装をしたシリウスが見える。
二人が窓際にいることに気付いたシリウスは大きく腕を振った。―――あのキラキラした笑顔と一緒に。
二人もそれに答えて手を振った。
「シリウスは他の誰にも渡しやしない」
「独占欲が強いのね」
「それは君も同じだろう?」
君だって僕と同じようにシリウスが好きなのだから。
だから『こういうコト』をする。
そう、僕達は共犯者なのだから。
ジェームズとリリーはシリウスLOVE(笑)
06/02/04