階段から落ちた。

そう、その落ちた愚か者は紛れもない僕の唯一無二の親友で相棒のシリウス・ブラックである。

もちろん、いくら動く階段だからといって普通に歩いて落ちたわけではない―――ピーターは別として。

その理由とはなんとも彼らしい理由であった―――階段から落ちそうになった子猫を助けたからである。

彼は子猫をかばって階段を真っ逆さまに落ちていき、頭を打って気絶し、今は医務室のベットで安らかに眠っている。

子猫はどこもケガをしていなかった。

僕達はと言うと静かにするという条件の下、シリウスのそばにいる。

 

 

 

「…シリウス、大丈夫かなぁ……」

ピーターがまだ起きないシリウスを心配して呟いた。

「大丈夫だよ。マダムは軽い脳震盪だって言ってたし」

リーマスが慰めた。

「それにしても、」

僕はにやりと笑った。

「なんでコイツはこんなにも動物に好かれるのかねぇ」

リーマスとピーターはくすくすと笑った。

 

 

 

実は僕達が医務室に入る承諾を得た時に例の子猫が現れ、

僕達が医務室から追い出そうとすると引っ掻いたり暴れたりして、

それを見兼ねたマダムが子猫も入れてよいということになったのである。

今、子猫はシリウスの胸のあたりで小さく蹲っていた。

「シリウスは猫だけじゃなくて梟にも好かれていたよね!」

ピーターが思い付いたように言った。

「この前の『魔法生物学』で、先生でさえ暴れるのを止められなかったユニーコーンをなだめていたよ」

ふふ、とリーマスが笑って言った。

「シリウスには動物達を引きつける『なにか』があるんだろうね…いや、動物と同類だからかな…?」

「それはちょっと言い過ぎなんじゃないかな、ジェームズ?」

リーマスがツッコんだ。そのやり取りにピーターがくすくす笑った。

「……んー…」

僕の相棒が起きるのも時間の問題。

 

 

 

 

 


ただシリウスが動物に好かれているというお話。

06/01/28