机の上に放り出された本を、気まぐれにパラリとめくる。

それはジェームズが学校の図書館から借りてきた本である。

しかもそれは恋愛小説で、ありがちな三角関係。

当の本人はクィディッチの練習で不在。

ジェームズは悪戯まではいかないが読書が好きらしく、よく談話室で本を読んでいた。

俺がジェームズの読書の邪魔をするのであまり進んでいないようだが。

「よくこんな分厚い本読んでられんなぁ…」

とか言いつつ自分もそれにハマッてしまい時間を忘れて読み耽った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――ゥス…」

 

―――んだようるせぇな…。

 

「シリウスっ!」

「ぅわっ!!?」

ジェームズに大きく肩を揺すられ飛び起きた。本を読んでいる途中で眠ってしまったらしい。

「…本を読むのはいいけど、学校の本を君のよだれまみれにしないでくれよ」

「えっ!?どっか汚した!!?」

「うっそ〜ん♪」

引っ掛かってやんの〜、と言って俺のおでこにでこピンをくらわせた。

「おっ…お前、俺を騙したなっ!!?」

殴りかかろうとしたらあっさり躱され、体制が崩れて倒れそうになった俺を

ジェームズが手首を掴んで自分のほうに引き寄せ、触れるだけのキスをした。

突然のことで何をされたかわからなかったが、時間が経つのに比例して顔が赤くなった。

「お前何しやが「シリウス、」

ジェームズがあの、捕らえたものを逃がさない真剣なまなざし俺を見つめた。

 

 

 

 

 

 

「僕は君と縁を切るよ」

 

 

 

 

 

 

「……は?」

何言い出すんだよ。いきなり。

「僕は君と縁を切ると言ってるんだ」

何だよそれ。人に勝手にキスしといて勝手に縁を切るだって?

「…冗談も、休み休み言えよな…」

声が震えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「冗談じゃない」

ジェームズの目は、何も映らない冷え冷えとした色で俺を見据えた。

 

 

 

 

 

 

「僕は君が嫌いだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

身体に冷水を掛けられた気分だった。頭がズキズキと痛みだす。耳鳴りがする。

「やめろぉ…」

目をぎゅっ、と瞑ってもあのジェームズの目が甦る。

だんだん頭痛が酷くなり、耳鳴りは声へと変わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――ゥス…」

やめろ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…リウス」

もうお前なんかどっか行け…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「シリウス!」

俺はその声に驚いて飛び起きた。

「―――ジェー、ムズ…」

「大丈夫かい?ヒドくうなされてたようだけど…」

どうやらあれは夢だったらしい。―――どうりで展開が速いわけだった。

夢だとわかりひとまずほっと溜め息をついて、

それから今もなお心配そうにしているジェームズの首に腕を絡め抱き着いた。

ジェームズは、シリウスが自分から抱き着いてくるとは!と感動してしばらく放心状態だったが、

自分もシリウスの背に腕を回し、しっかり抱き合った。

 

 

 

 

 

 

 

 

ひとまず落ち着いたシリウスはジェームズから離れようとしたが、

彼は今だにシリウスを離そうとはせず、抱き締めたままだった。

「おーいジェームズぅー。もういい加減離してくれぇー」

「…離してくれだって…?」

ジェームズの表情は判らなかったが明らかに笑ってる。

「自分から抱き着いといて、何もなしで離す僕だと思った…?」

シリウスの顔から血の気が失せた。

その時ジェームズは細やかながら心の中で思った。

 

―――まさかあの本に挟めて置いた『フィクションよ、ノンフィクションへ!』の薬が効いたのかな…?

 

しかし今はそんなことを考えてるより、自分の腕の中にいる愛しい恋人をいただくことが最もな重要事項であった。

「では、いただきますっ♪」

ジェームズはシリウスをベッドへと押し倒した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


夢の中の話の展開が異常に早いっすね(´д`;)

でも書いてて楽しかった♪

06/03/27