夢を見たのだろうか。そう思って、いや違うと頭を振る。
* * *
アズカバンに入れられた。
すべてはそう―――ピーターの裏切り。自分の判断の甘さ。
―――ジェームズとリリーを殺したのも同然だ。
これでは名付け親としてハリーに会わせる顔がない。
ここにいると自分がもう、死ぬ間際の存在のようだ。
今までのことが走馬灯のように頭の中を駆け巡る。
どれもこれも思い出すことは楽しいことばかりなのに看守によってその思いは苦と化す。
「ハリー―――…」
ぽつりと口から言葉が漏れたのは愛すべき親友達の一人息子。
「リリー―――…」
優しく厳しく、そして美しい親友のフィアンセ。
「ジェームズ―――…」
生涯でただ唯一無二の親友。
―――本当に死んでしまったのだろうか?
鉄格子の向こうでは満月が不気味に光っている。
その光が牢獄の中に差し込む。
「リーマス―――…」
可哀相な人狼。最後まで疑っていた。君が正しかったのに。
窓の外から目を離すとそこにはいないはずのやつがいた。
有り得ないことが起きている。
それとも今までが夢だったのか?
だってそこにはジェームズがいるのだから。
「―ジェームズ…っ」
彼は微笑んでいた。ただ俺を見つめて。
「シリウス―――」
ジェームズが口を開いた。
「―――愛してる。ずっと、ずっと…」
たった一言そう言ってキラキラと消えてしまった。
夢を見たのだろうか。そう思って、いや違うと頭を振る。
だってジェームズがいたところにはアイツしか持っていない、
自分があげた碧玉のピアスがあるのだから。
「―――なんだよアイツ…自分が言いたいことだけ言ってさっさといなくなって…」
知らぬ間に涙が頬をつたっていた。
「―――っ、だから嫌なんだっ…いっつも勝手で―――俺だって……っ!」
―――好きなのに。
……悲恋?
06/01/05