※注意※これはジェームズとシリウスが幼少期に出会うという妄想に妄想を重ねたお話です!

 

 

 

 

 

 

「どうしたの?」

絶え切れなくてその子に尋ねた。

 

 

 

* * *

 

 

 

 

父親は五才の僕をある御屋敷へと連れていった。

「お前と同い年の子がいるから仲良くしなさい」と言った父は、これから行く場所がすごく嫌そうな顔をしていた。

その御屋敷は僕の家の大きさ以外全て異なった。

自分の家は光に満ち溢れて明るいのに、この家は薄暗く雰囲気が薄気味悪い。

こんな家に入ることに嫌悪感を抱いた。

 

父がドアの呼び鈴を鳴らすとやや間があって玄関のドアが開かれた。

「やぁMr.ポッター。それに…息子さん?」

父に向けた視線を僕に移した。ハンサムで言葉遣いは丁寧だったが、冷たい目と声の持ち主だった。

「君が直々に出迎えてくれるとはね、Mr.ブラック?」

父がこれほど冷たい声なのを初めて聞いた。

「ジェームズだ…確か、君の息子と同い年ぐらいだったが…」

「あぁ…確かそうだ」

僕はこの一瞬でMr.ブラックが嫌いになった。

彼は、こんな奴が我が息子と同い年だなんてという目で見下してきたからだった。

「立ち話は難だ…中に入りたまえ」

僕は父の後に続いて家へと入った。家の中は想像していた通り、豪華で陰気だった。

「家の中庭にでもシリウスはいるだろう」

Mr.ブラックが抑揚の無い声で言った。息子には興味が無いような言い方だった。

父に目で行ってきなさいといわれ、ブラック家の中庭へと向かった。

もっとも、僕にしてみれば父の隣りで難しい話を聞くのも嫌だったし、

この陰気な家に閉じ込められるよりは外の中庭に出られる方がありがたかった。

しかし、Mr.ブラックの息子―――シリウスという奴には出会いたくないと思った。

 

蛙の子は蛙の子、である。

 

 

 

 

 

 

 

中庭は広く、太陽の光を燦々と浴び、ここがブラック家であることを忘れるくらいだった。

花壇に珍しい花や薬草があり、それをしばらく眺めていると微かにすすり泣く声が聞こえた。

幽霊の仕業だろう、と僕は思った。古い御屋敷には付き物だった。

無視して観察を続けているとまたしても聞こえた―――しかも近くの草むらから。

僕は近くに落ちていた石を拾い、いつ何が起きても大丈夫なようにしてから草むらに近付いた。

「誰かいるの?」

声と同時に草むらを掻き分けた。すすり泣いていたであろう人物はぱっと顔を上げた。

僕は身動きができなかった。その人物があまりにも綺麗だったからだった。男か女か判断できなかった。

彼、もしくは彼女は驚いて僕の顔を見つめているままだった。

「どうしたの?」

絶え切れなくてその子に尋ねた。

「こんな所で隠れて泣いて…キャッチボールでもしてて窓ガラスでも割ったの?」

「きゃっちぼーる?」

きょとんとして僕を見詰め替えしてきた。

「それってマグルの何か?」

「うん」

ジェームズは答えた。

キャッチボールを知らないとはそうとうの世間知らずかバリバリの純血家庭の人だな、と思った。

 

純血家庭―――?

 

「君って、もしかして…シリウス・ブラック?」

「そう、だけど…」

草むらの影で泣いているかわいい子が、あのMr.ブラックの息子だとは思えなかった。

―――そりゃあ、Mr.ブラックはハンサムだったけどさ…。

僕は、こんな子がいずれあのような冷たい目と声の持ち主になるのかと思った。

「君、何でこんな所で泣いてたの?」

「君こそ、何でこの中庭にいるの?」

さすが、どんなにかわいくて、草むらに隠れるように泣いていてもブラック家の長男、抜け目が無い。

「僕はパパに連れてこられたのさ。僕と同い年の子がいるって…」

「へぇ、僕と同い年?」

まじまじとシリウスは僕を見つめた。

「それにしては随分小さいね…僕の肩ぐらいしかないんじゃない?」

人の弱い所をずけずけと突いてきた。

「僕の質問にも答えてよ」

ちょっとイライラとして言った。

「……」

シリウスは下を向き黙りこくった。

「言えないの?」

優しく言おうとしたが意地悪に言ってしまった。

「何か言ってよ」

「……母が、」

シリウスが口を開いた。

「いつも弟と比べる…そしていつも僕は弟に劣るって…」

これは意外だ。弟が兄に劣るのはまだわかる。だが兄が弟に劣るとは聞いたことがない。

―――ましてやブラック家の長男が。

「君、まさか…スクイブとか…?」

「そんなんじゃない」

確かに、Mr.ブラックは息子に無関心のようだったが、少なくとも息子の名前を口に出した。

噂によると、この家ではスクイブがでると勘当されると聞いていた。

「劣るというのは魔法とか技術のことじゃなくて、『考え』のことだ」

「考え?」

「そう」

シリウスはうなづいた。もう涙は流していなかったが、暗い顔だった。

「僕は…」

言いかけて彼は口を噤んだ。見ず知らずの僕に喋りすぎたと思ったらしい。

「…やっぱり言わない」

「どうして?」

僕は、草むらに今だしゃがみこんでいる彼に詰め寄った。

「ねぇ、教えてよ」

シリウスは立ち上がった。僕も立ち上がりお互い睨み合った。

シリウスの身長は予想通り、高かった。僕の身長は彼の鼻ぐらいしかない。

シリウスは鼻で笑った。

「やっぱり小さいね」

さっきまでの印象がガラリと変わった。

高慢ちきな顔で僕を見下したシリウスはMr.ブラックとそっくりだった。

 

「…そうやって自分の本心を隠すの、君は?」

シリウスの眉間に皺が寄った。

「よりによって人の弱みを使って話を反らすほど言いたくないのかい?

 ―――その通りなら君は真のブラック家の長男だ。人の弱いところを自分のために使うなんて…」

「黙れ!」

シリウスが怒鳴った。

「人の気持ちも知らないで…!これ以上言うつもりならこっちだって容赦しないぞ…っ!」

そう言い終わらないか否か、シリウスはズボンから杖を取り出し、僕に向けようとした。

しかし、僕は右手にずっと握り込んでいた石を彼の手に当てた。杖は手から離れ、芝生に転がった。

シリウスは一瞬、杖が無くなって愕然としたようだったがすぐに僕を睨んできた。

「そうこなくちゃ」

僕はシリウスに飛び掛かった。だが彼は僕が飛び掛かる前に倒れてしまった。

「え―――何で…?」

考える前に僕も足の力が抜け目の前が真っ暗になった。

 

 

 

 

 

 

「君の息子はそうとう口が達者なようだね、Mr.ポッター」

「君の息子は、君と君の妻に似て綺麗で高慢だ、Mr.ブラック」

Mr.ポッターとMr.ブラックが、今しがた倒れた二人の息子の後ろに杖を構えて立っていた。

「僕達が止めてなかったらこの二人はどうなってたんだか」

Mr.ポッターはジェームズをおぶりながら言った。

「きっとジェームズは君の息子の顔は殴らなかっただろうね…」

この子はジェームズ好みの顔だからね、とMr.ポッターが言った。

ふん、とMr.ブラックは鼻を鳴らした。

「シリウスはブラック家でも群を抜く頭脳、魔力、容姿の持ち主だ…しかし、私の妻が言う通り愚かだ。

 なんと、純血を好ましく思わず、いつもマグルのことを話す…本当に愚かなことだ」

「そんな愚かな息子を心配して僕を呼んだのは何処のどいつだい?」

Mr.ブラックは無視してシリウスを担いだ。

「さぁ、早く引き上げてくれ。

 妻と屋敷下僕がショッピングから帰ってきて、見られたらそれこそお終いだ」

「しまいにはお払い箱ってわけか」

二人は息子を背負って玄関まで並んで歩いた。

「こいつ等の記憶はきれいサッパリ消えてしまったのか…

 それじゃあ、二度目の初対面はホグワーツ入学の日かな?」

「そうかもしれないな」

Mr.ポッターは玄関の扉に手を掛けた。

「それじゃ、次会う時はお互い敵同士だ」

「あぁ、もう君とは一生喋りたくない」

そうしてMr.ポッターは気絶している息子と共にブラック家を後にした。

 

 

 

 

 


中々楽しかったです書いてて。

さすがにポッターさんとブラックさんは家を訪問する仲ではないよなぁ〜。

今回はBL要素を薄めてみたのですが…変わんないか。

06/05/22