今日、何かが起こるという予感はあった。しかしこの状況を見て、思わず踵を返したい衝動に駆られる。
「…なぜお前がこんな所にいるのだ」
「その言葉、そっくりそのままお前に返すぜ、スネイプ」
誰もいない天文台のはずなのになぜか先客が一人。その名もシリウス・ブラック。
このまま引き下がろうかと考えたが、コイツのためになぜ僕が!
と、いうことで近くの手摺の上に腰を降ろした。
相手もそう思っているらしくそこに居続けた。
ちらり、と隣を見ると相手もこちらを向き、にやりと笑った。
「…何がおかしい」
「べっつにー。なーんも。」
―――だからコイツは嫌なんだ!
「…今日はポッターと一緒じゃないのか」
珍しい。こんな真っ昼間から。
「ジェームズが気になんの?」
「ちがっ…!そういう意味で言ってるんじゃ「ケンカしたんだよ」
これには正直驚いた。
「お前らでもケンカをするのか。」
「俺達だってケンカぐらいするさ」
「ケンカするほど仲がいいというやつか」
ははっ、と相手が笑った。さっきのにやりとした笑いよりこっちのほうが断然綺麗だ。
「そうかもな…この学校に来てアイツと何回ケンカしたことか…
結構些細なことでケンカしてるからなぁ、俺ら。大抵、俺が悪いんだけど。」
「お前がポッターにつまらん意地を張るからではないか?」
「ほとんどそうだな」
何故か今日のコイツといったら妙に突っ掛かってくる様子もなく、スムーズに会話が進む。
「今日もお前のせいなのか」
「いや、今日のは…」
一瞬、顔が曇った。きっと、さっきまでやっていたケンカのシーンを思い出したのだろう。
「今日は…アイツがいきなりキレたんだ。確かに俺、アイツになんもしてないんだぜ?
それなのに、『君とは縁を切るっ!!』とか勝手に言いやがって……」
「…本当にお前はなんもしてないのか?」
「うん。王様ゲームで女の子達とちょっとじゃれついただけだよ」
「じゃれついたって…?」
「別に…手つないだり、ポッキーゲームしたり、ラップごしにキ「それはお前が悪い」
「いったいどこがアイツは気に食わなかったんだっ!?」
―――むしろ、コイツが気付かないことにでは?
ジェームズ・ポッターに初めて同情する記念すべき日となった。
「取りあえず、お前が謝れ」
「……そんなにアイツ、女の子達と一緒に遊びたかったのかなぁ…?」
だって女の子達みんな、他の男どもは誘わなくていいって言ってたんだぜ?
―――いやいやそこではなく……って何ツッコんでんの自分っっ!!?
はた、と昨夜のルーピンとの会話を思い出した。
『君も可哀相だね。ジェームズとシリウスの相手するの…
僕、あの二人の会話聞いてると知らぬ間に心の中でツッコミをいれちゃうんだ…
最近ではピーターが、僕が心の中でツッコむ前にツッコんでくれるから助かってるんだ…』
―――何をぬかすんだコイツは…、と昨日の時点ではそう思ったが、
今になって分かった―――僕にも今即座に声に出してツッコんでくれる人が欲しい。
「シリウス―――っ!!」
その声に身体が条件反射で杖を持とうとしたが、
その言葉の発声者のおかげで杖は数メートル先にふっ飛ばされた。
「―っ、ポッター…」
目の前には箒に乗ったジェームズ・ポッターがいた。
「やぁ、スネイプ。どうしてシリウスと一緒に居るんだい?」
―――ブッコロス。顔にそう書いてあった。
さすがにこれには我慢ならなかった。―――この二人揃ってなんというやつだ!!
「なぜブラックといたかって?それはお前がブラックを女達に取られて醜い嫉妬を起こしてコイツに当たって、
ヤケになったコイツが天文台にいたら運悪くも僕と出会い、その僕に今の今までグチってたからなのだ!!!」
二人はきょとんとして僕を見、そしてお互い顔を見合わせた。
「お前…俺が女の子達と遊んでるのが気に食わなかったのか…」
「シリウス…君、グチるほど僕とケンカしたのがつらかったのか…」
何この空気。お前達、さっきまでケンカしてたんだよな?てかこんな空気にしたのはこの僕?
とりあえずこんな所はすぐさま撤収するのが一番だと思った。
―――やっぱりあの時すぐにでも踵を返すべきだった。
原作とかけ離れすぎですね(´д`;)
シリとスネちゃま仲良すぎ。
06/01/16