クリスマス・ダンスパーティー前日。

男子はダンスのパートナーを見つける為、目当ての女子にアタックしてはフラれ、

女子はできるだけ見栄えのいい相手を選ぶ。

 

 

 

 

「リリー!」

大広間に続く廊下を歩いていたら同室の友人が手を振りながら近付いてきた。

「もうパートナーは決まった?」

───そらきた。

『ダンスのパートナーは誰か』は最近の女子の間で話題に必ずなるネタとなっていた。

「シリウスの相手って誰だと思う?きっとすっごく可愛いんだろうなぁ…」

───そんなコト私に聞かないでよ…。

 

ほとんどの女子───グリフィンドールはもちろん、スリザリンの女子までもがシリウス・ブラックをダンスのパートナーとして狙っていた。

確かにシリウスは学校で一番格好良い。この人生であんなに綺麗な人は一生見られないと思う。

女子が羨むくらいサラサラつやつやの黒髪、涼しげな目元にそれを縁取る長い睫毛。

すっと筋が通っている鼻筋。自分より白くてすべすべの肌が羨ましい。

しかも彼はこの間のマクゴナガルの特別レッスンで素晴らしいとしか言い様のないダンスを披露したのであった。

そんな彼が自分の隣に並んだら女子はもう卒倒するくらい嬉しいんだろうけど、

自分より綺麗な人が並んだら、ただ彼を引き立てるだけだと私は思う。

そんなコト、口が裂けても言えないケド。

 

友人の話を聞くとも聞かないでそんな事を考えていた。

 

 

 

「で、リリーは?」

「は?」

「パートナーよ、ダンスの」

「あぁ…まだいないわよ」

「へぇ〜意外。もうとっくのとうに何人かからお誘いがきてると思ってた」

 

お誘いなら三、四人から申し込まれていた。もちろん全員のお誘いを蹴った。

まず、人込みに紛れるのが嫌だったし踊りたくもなかった。

だけど、ダンスローブは着たかった。

今年度の学用品を買いにダイアゴン横町に行った時に洋品店のショーウィンドウで気に入ったのがあったのだ。

今年はダンス・パーティーがあるし…と、いうことで奮発して買ったのだった。

今年はみんなが踊っているのを美味しいご馳走を食べながら遠くで眺めていよう、と考えていたのにこれだ。

 

 

 

 

大広間につき昼食のミートボールスパゲティを皿に盛っている時、

「エバンスっ!」

───またコイツ…!

今手に持っているフォークを彼の額に突き刺してやりたい衝動にかられた。

 

「…何か御用でも?ポッター」

「もちろん君をダンスのパートナーとして誘うのさ!このままだったらシリウスと踊ることになっちゃうんだ」

「その相棒と踊ったら?よかったわね、踊っている時もずーっと一緒よ」

「僕はそれでもいいんだけどねぇ…」

「全然よくないっ!」

シリウスは叫んで私に近付いきて訴えた。

「君がジェームズと踊ってくれなかったら俺がジェームズと踊るんだ!しかも女の子の格好で!」

「いいじゃない。絶対似合うと思うわ」

「そんな…」

シリウスは愕然とした。

「これで決定だな、シリウス。僕が特注で君のドレスローブを頼んであげよう!」

「お断りだ!」

肩を抱こうとしていたポッターの手をシリウスはばしりと叩き落とした。

「そうだ!」

シリウスはイイ事思い付いたという顔をした。

 

 

「ジェームズが嫌なら俺と踊らない?」

 

 

隣にいた友人が息を呑んだ。

「え…っと」

「もちろんよっ!ね、リリー?」

「ちょっと…」

「よしっ!これで決まりだ!ヨロシクな、リリー」

友人とシリウスだけで勝手に話が進んでしまった。

「ちょっと、勝手に決めないでよ」

私は友人を非難した。

「いいじゃない。クリスマス当日までパートナーがいないもの同士仲良くすれば。

 それに私、リリーとシリウスが立ち並ぶ姿、見てみたいもの」

───見てみたいもの、ってねぇ……。

シリウスと踊ったらどれだけの人に妬まれるかを考えたら、私は目の前が真っ暗になった。

 

 

ポッターはずるいぞぉーと唸っていた。

 

 

 


『しかも彼はこの間のマクゴナガルの特別レッスンで

素晴らしいとしか言い様のないダンスを披露したのであった。』

の部分があります。blogのどっかに ( ̄△ ̄;)いつかこっちにUPしたい。。。

ついでに続きます。

06/12/24