鏡 〜鹿ver.〜
また、やってしまった。
ここは村一番高い塔の上かな?
あぁ・・・またママに叱られるなぁ。
下の方では急に魔法で姿を消した僕を村の友達が捜している。
「かくれんぼなんてしなけりゃよかったなぁ」
僕は魔力が強い(と、パパが言ってた)ほうで、自分でも制御がきかない。
「さぁ、なんて言い訳をしようか」
ママと友達に。
僕はゴドリック村のゴドリックの谷に住んでいる。
この村には魔法使いとマグルが共に住んでいる。
いちよう、マグルには隠しているつもりなんだけど、たぶん大人達は気が付いている。
知らないのはマグルの子供だけ。
僕はピンチになるたんびに魔法でどっかへ行ってしまうのでそのぶん、嘘をつく。
なんとも大変なことだ。
5,6歳の頃はまだよかった。同じ嘘を繰り返し使ってもバレない。
しかし、今となっては同じ嘘をつけない。
魔法のことを知らない子供達は僕のことを夕食の話題にする。
その子供達を通じてママのもとに伝わる。
「後にバレたときのほうがこわいからさっさとホントのこといおう」
そんなうわさとママを恐れている僕はこの村のガキ大将だ。
隣町の奴らとも『 いくさ 』をしたことがある(そして僕はいつも勝つ)。
ケンカはとにかく強かった。
(隣町の連中には「チビのくせに」とか「細いくせに」とかよく言われる)
もっと嫌味な奴は僕のことを『チビザル』と言う。
そう言い終わったときには大抵そいつはもう地面に突っ伏している(僕が倒すから)。
でも、確かに僕は自分でもサルのようだと思う。
なんせ、この丸眼鏡にすばしっこさだ。木登りだって得意だ(これはケンカの時に役立つ)。
この村で僕に逆らう奴らはいない。
僕は自分の家がある、谷へ向かって歩いた。
村からはちょっと離れている。
村の中では一番立派な家。
その玄関の扉を開けたらまず目に入るのが床から天井にとどくまである大きな鏡。
僕は帰ったらかならず鏡をみて、
今日の髪の毛の暴れっぷりをみる。
(大抵ケンカした時や激しい運動をした時は髪がすごい)
今年の夏は暑かったせいか、僕は日焼けして真っ黒な自分を見る。
「ただいまー」
と、玄関に入り鏡をみた。
だけどそこには僕がいなかった。
鏡に映ったのは黒髪の、だけど僕とは対照的なまっすぐな髪の少年。
その少年は前髪を(ってか全体的に)伸ばしていて顔が隠れている。
少年は僕に気が付いていないのか、そのまま鏡の向こうに突っ立っている。
僕は無意識のうちに鏡に駆け寄った。
両手の平を鏡につけた。
鼻が鏡につきそうになるくらいに近づく。
その少年の顔がみたい。
ただそれだけのために必死になっていた。
向こうの少年はそのままだった。
近づいてみてわかったのは、僕より10cmは背が高いこと。
そして、その少年がいる家がかなり立派で、あきらかに金持ちの家だった。
「ジェームズ、帰って来てるの?」
僕の肩が驚いて上がった。すぐさま声のするほうを見た。
キッチンからママが顔を出した。
「帰ったら、手洗いうがいでしょ?」
僕の心臓はまだ驚いてドキドキしていた。
「うん、わかったよママ」
と答え、もう一度鏡を見た。
が、そこにはあの少年はいなく、僕がいた。
それから僕は毎日、鏡の前を通ると立ち止まる癖が出来てしまった。
ただ、あの少年の顔がもう一度見たくてたまらなかった。
そんなある日にホグワーツからの手紙がきた。
第二話でジェームズです。
あたしのmy設定では彼は村一番のガキ大将です。