組み分け帽子 PART2

 

 

あぁ、やっぱりそうだったんだね名無し君。

君の母親を見た時から、なんとなくわかった。

(自分で言うのもなんだけど僕は勘がいい)

名無し君が名乗りたくなかったのは家が嫌だからなのかなぁ・・・。

 

 

僕はしばらくあの2人のやりとりを見て騒いでいる

上級生達の声を聞きながらこんなことを考えていた。

僕はジェームズ達と列車を降りたらすぐ離れた。

これ以上いたら僕はあの3人を間違いなく引きずり込むと思ったから。

(正確には引きずり込まれるかな?)

ジェームズはここから左側のほうにいるのが見える。

それから厳格そうな女の先生が生徒を黙らした。(怒りのオーラで)

そして組み分けを再び開始した。

 

 

「エバンス・リリー!」

シリウス・ブラックが呼ばれてから何人か後に呼ばれた。

いきなり僕の後ろの人が動いて堂々と前へ歩いていった。

深みのかかった赤毛の、明るいアーモンド形の緑の目。

列車の中の女の子だった。

組み分け帽子は数秒考え込み、「グリフィンドール!!」と叫んだ。

ちらりと視界の隅に映ったジェームズは小さくガッツポーズをしていた。

 

組み分けが進むにつれ、僕はどんどん胃が重くなってきた。

もし、組み分け帽子が

「君は狼人間だから、ホグワーツには必要ない。よって君にあてはまる寮もない。

今すぐ荷造りして家に帰りなさい」

なんて言わないことだけを切に祈った。

 

「ルーピン・リーマス!」

 

あぁ、とうとうやってきた。

 

僕はのろのろと前へ出た。

 

どの寮でもいいから帰れとだけは言わないでよ・・・

 

 

 

「あなた、列車の中でケンカしてた人でしょ?」

いきなり俺の近くに近づいてきてこんな事を言って座った赤毛の少女。

俺は上級生達の席より離れて座っていたので周りはガラガラだった。

「そーだけど」と、そっけなく返した。

 

女と喋るのは嫌だった。

なんせ小さい頃から女と話すのは母親や叔母達、従姉達だけだったから。

「ねぇ、なんであなたが組み分けされた時、周りがあんなに騒がしかったの?」

 

・・・ってことは君はマグルかぃ?

 

初めてマグルと喋った。

そしてマグルに興味が出てきた。

 

ジェームズといい、こいついい、俺の周りは何かといい縁がありそうだ。

「そんなことより、俺、マグルの生活とか聞きてぇなぁ」

「ルーピン・リーマス!」

列車の中で知り合った少年の名前が呼ばれた。

そして俺はあることを考えた。

 

リーマスもピーターも俺のこと、嫌いになったりするだろうか?

 

でも、何故か嫌われる感じがしなかった。

 

どうか、4人でグリフィンドールに入れますように・・・

 

 

 

「君が狼人間なのは知っている。だからってそんなに組み分けを恐れる必要はないよ」

と帽子は優しく言った。

僕はほっと胸をなでおろした。

「君は大人しそうに見えるがなかなか筋がいい・・・」

帽子はウ〜ンと唸った。

僕は筋がいいらしいが帽子はどの寮にするか決めかねているらしい。

僕は『ある欲』が浮かんでしまった。

 

グリフィンドールがいいなぁ・・・

 

「グリフィンドールかね?何故?」

僕は後悔した。この帽子は人の気持ちが解ってしまうんだった。

「なにも後悔することはない。自分の意思を伝えるのはいいことだ」

 

だって・・・

 

僕は考えが止まった。

僕はまだあの3人に未練たらたらなのだ。

 

あぁ、ダメ・・・やっぱりハッフルパ・・・

 

「グリフィンドール!!」

 

僕は究極に後悔した。

 

 

 

これでシリウスとリーマスがグリフィンドール。

今はピーターが組み分け中。

組み分け帽子が「グリフィンドール!!」と叫んだ。

ピーターはふらふらしながら赤が目印のグリフィンドールの席に向かった。

 

よしよし・・・次はきっと・・・

 

「ポッター・ジェームズ!」

 

待ってましたぁっ!!!

 

僕は体より少し大きめの制服をだぼつかせながら帽子のところまで来た。

僕はいきよいよく帽子をかぶった。

「おわぁっ!!ポッター家の息子かっ!そんなに急がんでよいっ!!」

早くグリフィンドールにしてよっっ!!

「君のお父さんにそっくりだ・・・君のお父さんも同じことを・・・」

昔話はいいからっ!

「君はグリフィンドールじゃないかもしれないよ」

帽子が意地悪く言った。

もちろん、僕の思考回路も一時停止。

「君のお父さんに同じことを言ったら君と同じ反応をしたよ」

・・・からかわないで組み分けしてよ。

「そんなの、する前から決まってる。グリフィンドール!!

僕は得意顔で席へと向かった。

あの、偶然出会った3人の元へ・・・

 

 

「いやいや皆さん、全員お揃いで・・・」

今は生徒がホグワーツの豪華な御馳走を食べている。

そして向かいに座る赤毛の女の子、『リリー・エバンス』に挨拶した。

「君、列車の中にいた子だよね?僕、ジェームズ・ポッター。君は?」

聞かなくても組み分けの時、覚えていたのだが

それじゃあストーカーしてたみたいなので聞いた。

「リリー・エバンスよ。もう列車の中でなんてケンカはしないことね、ジェームズ」

「うっ・・・ふっ2人だけで自己紹介もなんだから改めて5人で自己紹介をしよう!」

と、僕は返事をはぐらかすために提案した。

「OK」「いいよ」と口々にみんな言った。

その時、僕は気付いた。

リーマスの顔がよろこんでいいのかいけないのか微妙な感じの表情だった。

「それじゃあ、改めまして。僕はジェームズ・ポッター。

いつかは隣のハンサム君の身長を抜かす予定」

僕らは笑った。

「言ったな」と、シリウスはにやりとした。

・・・結構、僕としては真剣なんだけどなぁ。

「言わなくてもわかると思うけど・・・俺はシリウス・ブラック。

いつかは隣のチビのくしゃくしゃ頭を真っ直ぐにする予定。

そしてジェームズにはぜってー身長抜かさせない」

また笑った。だんだんいい雰囲気になってきた。

「ぼっ、僕、ピーター・ペティグリュー!よろしくねっ!!」

ピーターは緊張しているのか早口で言った。

「あたしはリリー・エバンス。

マグル出身だから全然この世界のことなんてわからないけど、がんばってやってくわ」

あっ、マグル出身だったんだぁ。話をつくる機会が沢山ありそうだ。

「僕はリーマス・ルーピン。よろしく」

リーマスは普段のにっこり顔に戻っていた。

「リーマスってさぁ、あの狼少年だろ?」

いきなりシリウスが言った。リーマスの顔が強張った。

「ほら、リーマスの綴りって『Remus』だろ?

もう1人のロムルスっつー双子が狼に育てられたんだよ。

なかなかカッコイイ名前じゃん」

リーマスの表情が和らいだ。

「そうだよ。マグルの神話に出てくる双子から取ったんだ。

僕の祖父がマグルの神話とかが好きで名付けたらしいんだ。

もちろん、ミドルネームは祖父のなんだぁ」

それからはみんなの昔話や今日の御馳走のことについて話した。

 

 

「やっぱり、なにかの縁なんだねぇ、僕達」

グリフィンドール生徒の寝室には見慣れた顔ぶれの奴らがいる。

「これから卒業までみんな一緒だねっ!」

と、ピーターが嬉しそうに言った。

「そうだねっ!!」

僕も嬉しくなってピーターと両手をつないでクルクルと回った。

シリウスも完全にあの無表情が消え去っていた。

顔は満面の笑みで男でもほれぼれするぐらい快活に笑っていた。

夕食のときのリーマスの顔を思い出し、ちらっとリーマスを見た。

部屋が暗いせいもあるかもしれないが、またもや微妙な表情だった。

「明日から授業が始るのかぁ・・・」

僕と回って疲れたピーターがぼやいた。

「魔法の授業ってどんな感じなんだろう?難しいかなぁ・・・」

「誰にだって最初はあるんだよ、ピーター。

マグルなんて僕達より知らないんだから苦労するだろうね・・・」

僕はそう言ってリリーの顔を思い浮かべた。

「さぁ!明日は早いよっ!みんなおやすみ!!」

「おやすみ!」と3人は返した。

だけどやっぱりリーマスの声が幾分か沈んでいた。

 

 

 

 

 

 


やっと入学しました親世代。

ピーターとかかなりはしょってます(笑。

どんどん長くなってくぅ〜・・・。