組み分け帽子

 

 

僕らはコンパーメントで有意義な時を過ごした。

僕が一通り話し終わった後、リーマスやピーター、そして名無し君の話しを聞いた。

3人とも興味深い話しでとてもおもしろかった。

ホグズミード駅が近くなると何故か名無し君とリーマスの顔色が曇り始めた。

 

 

それにしても・・・

 

あそこのコンパーメントにいた、赤毛の子の名前はなんて言うんだろう?

 

 

 

「イッチ年生はこっち!イッチ年生はこっち!!」

とても大きな男の人が僕ら1年生に叫んでいる。

「あっちだって、みんな」

と後ろを振り返るとピーターが

「ジェームズ、リーマスとはぐれちゃった」

と言って僕のローブを引っ張った。

僕は周りを見渡したがなにしろ人数が多いので到底見つけられそうにない。

(そして僕はチビだ)

視界に入ったのは不安そうに僕を見ているピーターと

また僕と会う前の、無表情な顔をしている名無し君。

「大丈夫だよ。組み分けの時に名前が呼ばれると思うから・・・」

 

 

とても厳格そうな黒髪の髷を結った女の人を先頭に僕達は大広間に入って行った。

僕はずっときょろきょろしっぱなしだった。

大広間の珍しい光景も理由の1つだが一番の理由はあの赤毛の子だ。

だが人が多すぎて見つからない。

たぶん、大広間いつも以上ににぎやかだったと思う。

新入生は上級生たちの机の間を1列ずつ歩くので上級生からは僕達の顔は丸見えだ。

女の上級生が名無し君を見てキャーキャー言っていたのだ。

(「見て!あの子ホントに11歳!?」

「ハンサムねぇ〜w」

「かわいいでもとれるわよ!」

「こっち見ないかなぁ・・・v」)

 

僕達全員、上座のステージに上った。いよいよ組み分けが始る。

さっきの厳格そうな女性が椅子とつぎはぎだらけの帽子を

持ってきて名前を読み上げ始めた。

「・・・ジェームズ」

それまでずっと黙りっぱなしの無表情をしていた名無し君が僕に話しかけた。

「短い間だったけど、お前と知り合えて嬉しかった。

ホントに・・・こんなに笑ったのは初めてだ」

「なんだい、いきなり改まったりして・・・」

名無し君は僕を無視して続けた。もう組み分けは3人終了した。

「でも、これで・・・最後なんだよな・・・・・・」

「ブラック・シリウス!」

歓声と拍手でにぎかえっていた大広間が水を打ったように静まり返った。

そして後からくるひそひそ声。

 

 

ブラックに星の名前ってことは「あの」ブラック家か・・・

 

・・・まてよ

 

 

僕の思考回路が高速で動いた。

あの赤毛の子のことすら一瞬忘れた。

 

 

鏡で見た、いかにも金持ちそうな家

名無し君が何故名乗らないか

そして、これからお別れでもするかのような言葉

 

 

そして名無し君、いやシリウス・ブラックは前へ進み出た。

 

 

 

 

 

これであいつとお別れだ。

もう、2度と話さないだろう。

リーマスもピーターも。

たぶん、リーマスは俺の正体に気付いて離れたんだろうな・・・

ほら、見ろよ。上級生の顔という顔を。

恐怖、妬み、恨み、そしてスリザリンの生徒の勝ち誇った顔。

 

 

俺は組み分け帽子を取り、椅子に座って帽子をかぶった。

帽子が大きくて視界が真っ暗になった。

 

 

もう少しあいつらと友達でいたかった・・・

あんな家なんかに生まれてこなければ・・・

 

 

「ブラック家出身だからってスリザリンに入るとは限らんよ」

俺はビックリした。

 

帽子が喋ってる・・・?

 

帽子はかまわず続けた。

「現に、お前さんの従姉のアンドロメダや叔父のアルファードがそうだろう?」

俺の思考回路が正常に戻ってきた。

どうやらこの帽子は嫌味にも人の心の中が覗けるらしい。

 

だけどお前は俺をスリザリンに入れる気なんだろ?

「お前さんは確かにブラックの血を引いている。

才能がありふれているところはまさにそうだ」

 

俺は胃のあたりが重くなった。

 

「だけど、ブラックとは決定的に違うものを持っている」

決定的に違うもの?

「そうさ。その違うものがある寮にぴったり当てはまるんだ」

その違うものって・・・?

「それは自分で見つけることだね」

 

少し間を置いて帽子は大広間に、

みんなが聞き間違えないように高らかにこう叫んだ。

 

 

「グリフィンドール!!」

 

 

大広間がざわついた。先生までもがビックリしている。(ダンブルドアは別だ)

そして俺もビックリしている。

俺は帽子を取って見つめた。

 

 

レイブンクローならまだわかる・・・

でも、いきなり・・・なんでグリフィンドール?

 

 

厳格そうな先生が生徒をだまらせ俺に座るよう命じた。

俺が上座を降りて重たい足を引きずるように席に向かおうとした時、

 

「シリウス・ブラックっっ!!」

 

大広間にまだ声変わりしていない、聞き覚えのある幼い声が響いた。

 

 

あぁ、あいつの声だ・・・

あいつ、行きの列車ん中でグリフィンドールに入りたいって言ってたな

俺が入ったからきっと怒ってんだろう・・・

きっと「君は僕を騙してたのか!?

君なんかがなんでグリフィンドールに入るんだ!!」て言うんだろう。

 

 

そう思うと顔が上げられなかった。

目が熱くなりかけた時、ジェームズが言った。

「君なんでそんなカッコイイ名前なのに僕に隠してたの!!?」

「・・・はぃ?」

思わず顔を上げてしまった。

予想していた言葉とは全然違った。

しかもその言葉には俺への好意が含まれている!

ジェームズがまたキラキラした目で俺を見ている。

俺は嬉しくなったと同時に周りの視線に気付いた。

顔が赤くなるのを感じた。

「ばっ、バカヤロー!!こんな大勢の前でなにでけー声で人のこと呼んでんだ!!」

そう言って赤が目印の、グリフィンドールの席にダッシュで、

そして笑みを含めた顔で向かった。

 

 

 

 

 


かな〜り長くなってしもうた・・・(-_-;)

この2人のやりとりで有名になったらいいなぁ〜って。