ホグワーツ特急に乗って
とうとう来てしまった。キングズ・クロス駅。
両親にはお見送りに来るのは断っておいた。
が、それを今は後悔している。
9と4分の3番線への行き方がわからず、呆然としている僕。
「このまま、どこか遠くにでも行こうかな・・・」
なんて、お金を一切持ってないのに独り言を言ってみたりした。
「あと数分で列車が出る・・・」
いちよう、9番線の前にいるが、さすがに焦ってきたので、
魔法使いらしい人に聞いてみようとしたがそんな人達は見当たらない。
「あぁ、どうしよう!」
「ほんと、なんでこんなマグルばっかりのところに9と4分の3番線なんかがあるのかしら」
どことなく冷たい女性の声が僕の耳に入った。
魔法使いが使う言葉。
僕が振り返ったと同時に
「あなた、そんなところにいたら邪魔よ。早くどけてちょうだい」
さっきよりも冷たく言い放たれていた。
その言葉を言い放った女性は背が高く、目が薄灰色で、
長い黒髪がゆるやかにウエーブをした人だった。
そしてものすごく美人だった。
僕がまだ除けなかったのでその迫力美人さんは眉根を寄せた。
僕はそれに気が付いてそそくさと除けた。
そして、その女性の少し後ろに少年がついていった。
その少年も背が高く、目が薄灰色で、真っ直ぐな黒髪だった。
少年の顔は母親似らしく、これまたずば抜けてハンサムだった。
いや、まだ幼さが残っていてかわいいでも取れるかもしれない。
その少年は申し訳なさそうに僕を見た。
母親があんな態度を僕にとったからだろう。
そして9と4分の3番線へ入って行った。
(そして僕はやっと9と4分の3番線の場所がわかった!)
「いいかい、ジェームズ」
これで5回目。
「いい加減もうわかったよパパ!!」
朝からずっと「学校で悪戯するな」とか「ケンカするな」とか
「規則は守れ」とか「トイレはくれぐれも壊すな」とか言ってくる。
自分だって学生時代は同じことしていたくせに!
「ジェームズ・・・なんでパパがこんなにしつこく言うと思う?」
いきなりパパがこんなことを言ったのでビックリした。
「えっ・・・だって、学校から手紙が来るから?」
パパは首を横に振った。
「ママだよ・・・」
これで僕は納得した。
もし、ホグワーツから手紙が来たらパパはママに殺されるだろう。
「パパだって、ジェームズの好きなようにしてあげたいよ。だけど・・・」
僕の悪戯好きの遺伝子はパパからしっかりと受け継がれていた。
パパには可哀想だが僕が悪戯をやめる気はさらさらない。
ホグワーツ特急の汽笛がなった。もう出発だ。
僕は赤い蒸気機関車に飛び乗って2人に叫んだ。
「ごめんねパパ!僕、向こうでもしっかり悪戯してくるよ!
ママもパパを殺さない程度に叱ってね!!」
2人が僕の発言の意味がわかった時にはもう何メートル進んだ後だった。
「困った」
両親との別れの挨拶が長すぎてコンパーメントがどこも空いてなかった。
重いトランク(だって悪戯道具が入っているから!)を引きずり
奥の車両までやってきた。
どのコンパーメントにも人が入っていたが、
その中の1つには1人の少年しかいなかった。
ここにしよう。
何故か僕はこのコンパーメントの中にいる、1人の少年を知っているような気がする。
少年は窓の外を見ているので顔が見えない。
コンパーメントの外で少年を観察した。
僕と同じ黒髪の、だけど対照的なまっすぐな髪。
身なりはかなりいいとこの出のようだ。
僕はふっとある記憶を思い出した。
鏡の中の少年?
僕は夏休み中ずっと鏡に出てきた少年をそう呼んでいた。
僕の鼓動が速くなった。
これはきっと何かの縁だ・・・。
僕はいきおいよくコンパーメントの扉を開けた。
いきなり目の前に現れた、鳥の巣頭の丸眼鏡でチビの少年。
その少年がいきなり扉を開けたので、うとうとしていた俺はビックリした。
そして突然、
「もう空いているコンパーメントがなくってね!君1人じゃ寂しいだろ?」
と目をキラキラさせながら言ってきて目の前にドカっと座った。
それから名前も言わずにキラキラした目でずっと俺を見ている。
「あのさぁ・・・なんか用あんなら言ってくんね?」
俺は耐え切れずにその少年に言った。
「あっ!ごめんね!!実は君に似た人を見たことがあるんだ」
「それじゃあ、人違いだな。俺は家を出ないから」
正確には「家を出れないから」だけど。
少年は「いやいや・・・」と言って手を振り奇妙なことを言った。
「鏡の中でなんだよ」
俺はビックリした。鏡を通して違う世界を見たと言った少年は俺を含めて2人目。
俺があまりにも変な顔をしたのか、
少年は「変な奴だと思ったかい?」と言ってにやりとした。
「あっ、そうだ!自己紹介してなかったね?僕、ジェームズ・ポッター。君は?」
ここで俺は固まった。
俺がもし、名乗ったらこいつはどんな反応をするだろうか?
俺は名乗りたくなかった。
せっかく、自分と同じ年くらいの少年が俺に好意を持っているのに
俺が「あの」ブラック家だと知ったらこいつは離れていく。
こいつとは友達でいたい。
それも、名前を聞くまでは・・・。
俺が名前を言わずにうつむいているので少年は話しかけた。
「そんなに名乗りたくないなら、そのままでいいよ!どうせ組み分けの時にはわかるから」
俺は嬉しかった。
自分を気遣ってくれる人を見るのは何年ぶりだろう!
だけど、これも組み分けまでだと考えたらまた気持ちが沈んだ。
書き忘れてたけど、
ジェームズの心情→赤
リーマスの心情→緑
シリウスの心情→青
とゆうことで。