「まさかレグルス・ブラックがシーカーだったとはなぁ」

「何でスリザリンが秘密にしていたのかわかるような気がする…」

「初めての試合だってぇのにあの速さ!」

「四年間シーカーをやってきたレイブンクロー生に勝っちゃったもんな」

「これでシリウスがクィディッチ選手だったら…」

「歴史に残る試合になるわね」

「ジェームズ対シリウスの弟も歴史に残るよ」

「ジェームズなら容赦はしないよな」

そんな会話が大広間に飛び交っていた。

 

 

昨日のスリザリン対レイブンクローではスリザリンが五百点の差をつけて圧勝。

今年のスリザリンはクィディッチに力を入れているようだ。

特にシーカー───レグルスがすごかった。

シリウスもそうだが、この兄弟は本当に才能溢れている。

レグルスの飛びは丁寧で、だけど速くてキレがいい。

 

「ジェームズ、アイツに勝てるか?」

試合中にウッドが心配そうな顔をして聞いてきた。

「やってみないことにはわからない」

僕は正直に言った。ウッドは落胆したようだった。

確かにレグルスはすごいが、ウッドは僕なら勝てると思っていたらしい。

 

 

 

 

「俺も、まさかレグルスがシーカーになったとは思わなかった」

その夜、二人して僕のベッドの上で胡座をかいて今日の試合について語っていた。

「…あの箒だって、うちから出ているに決まってる」

「それにしても…僕はレグルスがあんなに飛ぶのが上手かったなんて知らなかったなぁ」

「俺も知らなかったよ。まさかレグがあんなに上手かったなんて…」

シリウスは抱き締めていた枕に顎を乗っけた。

「…レグが箒で飛んでいるトコなんて今まで見たことなかった。アイツ、いつ飛ぶ練習なんかしてたんだ…?」

「それとも、元々レグルスの才能だったのか…」

それだったらかなり羨ましいことだ。

 

暫く沈黙があって、シリウスがウッドと同じような心配そうな顔で僕を見た。

「…勝てると思うか?」

「……やってみなくちゃわからない」

ウッドに返したのと同じように言ったが、シリウスにそう言うのに少しためらった。

やはり好きな子には格好いいところを見せたい。しかも朝にあんなことを言ったのだからなおさらだ。

「お前でもそう言うくらい、レグはすごいのか」

「…うん」

肯定したくはなかったが、シリウスに嘘は付きたくないので頷いた。

シリウスは暫く考え込んでいた。僕はそんな彼を眺めていた。

長めの前髪は顔の前で垂れ、目は伏せ気味で長く濃い睫毛が頬に影を落としている。

僕は彼の髪に触れようとした時、シリウスはぱっと顔を上げたので僕は手を引っ込めた。

「…レグルスは小柄で、四つのポジションの中で一番シーカーに向いている。

そしてあいつは獣並に───それこそ、獅子並に目が良い…お前と違ってな」

そう言ってシリウスは人差し指を僕の眼鏡のブリッジに引っ掛けて眼鏡を取った。

あ、と突然のことに間抜けな声が出てしまった。

「───だけどお前にはレグよりも多大な練習量と経験がある」

そしてシリウスは僕に近付き耳元で囁いた。

「…だからそんな、複雑そうな顔すんな」

彼の声は掠れて甘い響きがあった。僕の背中にはぞくりと震えが走る。

「…誘ってんの、シリウス?」

そう言って僕は彼の顎を掴んで、唇を寄せようとしたが、シリウスに肩を押されて拒まれた。

僕は眼鏡がなくて、ぼやけてしまっているシリウスを軽く睨んだ。シリウスはにやりと笑ったようだった。

「この続きは、お前が試合でスリザリンに勝つまでおあずけ」

「なっ…」

「ついでにその間に俺に触るの禁止。もちろんキスも」

「そんな…」

「じゃ、俺もう寝るわ。おやすみ〜☆」

シリウスは眼鏡を僕に放り投げ、悪魔的な笑顔を浮かべて部屋を出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

その次の日から、僕は一週間後の試合に向けて猛練習をした。


惜しかったジェームズ!

はたしてシリウスの祝福のキッスを手に入れられるか…!?

次回、『ドキ☆これってもしや恋の予感!?』お楽しみに!!(嘘ですごめんなさい)

06/09/16