今日は学校中の人々が待ちに待ったグリフィンドール対スリザリン戦だ。
何を待っていたかというと、もちろん、ジェームズとレグルスの最強シーカー対決だった。
なんと、勝った方がシリウスの祝福のキスをもらえるとかなんとか。
どっちにしろ、シリウスの知らないことだった。
シリウスは他のグリフィンドール生と一緒に競技場前で待っていた。
「今日は君の弟とジェームズの試合だな」
「シリウスとしてはどっちに勝ってほしい?」
「やっぱりジェームズ?それとも弟?」
朝からそういう質問ばかりされていたシリウスは内心うんざりしていた。
(俺がどっちを応援しようと勝手だろぉ…)
ここに来るのも実際嫌だったシリウスだが、せめてジェームズに声援の一言でもかけてやりたいと思って来たのだった。
人に話しかけられるのが嫌でリーマスとピーターを先に競技場に行かせて一人でのんびりとそこに向かった時、シリウスはレグルスに会った。
「シリウスっ!」
まだ声変わりしていない、幼い声がシリウスを引き止めた。
シリウスは後ろを振り返って、ユニフォーム姿の弟に微笑んだ。レグルスはシリウスに走り寄った。
まだレグルスの身長はシリウスの鼻あたりまでしかない。
レグルスは辺りをきょろきょろ見渡して言った。
「シリウス…いつもの人達は?」
「リーマスとピーターのことなら先に競技場に行ったよ」
「そう、なんだ」
レグルスは頬を淡いピンクに染めながら下を向いた。
「レグ、お前あんなに箒乗るの上手いのに何で誰にも言わなかったの?」
「えっ、と…僕、シリウスが乗ってる姿を見よう見まねで授業でやったら上手くいったんだ…
あっ!もちろん、家でこっそり練習してたんだっ。シリウスがホグワーツにいっている間…」
レグルスの頬はピンクから赤へと変わっていった。
「へぇ…それならレグは自力であそこまで上手くなったのか。すごいな」
そう言って微笑んでレグルスの頭をぽんぽん叩いた。
「シリウスだって…」
レグルスはくすぐったく思いながら言った。
「シリウスだって、自力で上手くなったじゃないか。シリウスは僕の憧れで目標だよ」
シリウスはシニカルに笑った。
「がんばれよ、レグ…だけど俺はグリフィンドールだから試合中はジェームズの応援するけど」
じゃあな、と言って競技場に向かおうとしたシリウスの背に向かってレグルスが叫んだ。
「もし、僕が勝ったら…一緒にホグズミードに行ってくれる…?」
ふ、とシリウスは笑みを零した。
「そんなの、いつだって一緒に行ってやるよ」
そう言ってシリウスは今度こそ競技場へと向かった。
グリフィンドールのクィディッチ・メンバーが競技場前にやってくるとグリフィンドール生がみんな選手に駆け寄って彼らを取り囲んだ。
シリウスはその遠巻きから少し離れたところでその光景を見ていた。
(これじゃあ、いつジェームズに会えるかわかんねぇな…)
そう思った矢先、人だかりの中からぼろっと人一人が溢れた───ジェームズだ。
ジェームズはすぐに、離れたところにいるシリウスを見つけて近寄ってきた。
「よくあの中から出てこれたなぁ〜」
シリウスは感心して言った。
「だってシリウスがここにいるから…ってか何であの輪の中にいないのっ!?」
「ごめんごめん」
シリウスはケラケラ笑って答えた。
「まぁ、俺がお前に言いたかったことはこれだけなんだけどな」
そう言ってシリウスは拳をジェームズの前に突き出す。
ジェームズはにやりと笑って、シリウスと同じように拳を前に突き出しそれを当てようとしてピタリと止まった。
「…まだ勝ってないのにシリウスに触っていいの?」
「…俺からはいいの」
と言ってシリウスはコツンとジェームズの拳に自分のそれを当てた。
「がんばれよ」
今読み返して思ったけど、少女漫画のような展開だなぁ。
06/09/23