急に肩に何かが触れ、思わず振り払う。

それが何なんだか容易に想像できる―――ジェームズの手が俺を引き止めたのだ。

三本の箒まで全速力で走ってきたのに、もうこいつは俺に追いついた。

 

 

「―――っ離せよ!」

「ちょっ…、待てよシリウス!」

「離せ!」

さっきよりも言葉を荒げた。

「離せ!しつこい男は嫌われるぞ!」

「悪かった!」

そう言って無理やり自分と目を合わせさせるために俺の肩を両手で彼は掴んだ。

「悪かった、ごめん。ついかっとなちゃって…」

「なんでお前が怒るんだよっ!こっちだって人前であんなことされて…っ!」

俺はありったけの憎しみを込めてジェームズを睨んだ。

「それは…っ―――お前が悪いんだっ!」

「はぁ!?何で俺が…」

 

 

―――何を言い出すんだこいつは。

 

 

 

 

「僕の言った意味を理解しようとしない」

「どういう意味だよ?意味わかんねぇお前…」

「デート」

ジェームズは一言そう告げた。

「…僕が君とデートしたいって言ってるのに君は色々と難癖つけて、自分とは関係ないみたいに言ったのが悪いんだ」

「だってそれはお前が行きたいっつったか「ほら」

ジェームズが遮った。

「ほら。そうやって言うとこ」

真剣な目なざしで瞳を覗き込まれた。

女の子だったら、こんな瞳で見つめられるとたちまち落とされるんだろうな、などと今とは関係のないことを頭の片隅で思った。

「わかってよ、シリウス…僕は君のこと「待った!!」

俺は続く言葉を遮った。

 

 

―――何か、ヤバイ気がする。

頭の中では警報が鳴り響く。

 

 

 

「何」

 

 

 

ジェームズの声のトーンが下がった。明らかに話を遮られたことに怒っていた。

「もうお前が言いたいことはじゅーぶんわかった!…だからここは仲直りの握手としようじゃないか」

と言って笑ってみせたが絶対今の顔は引きつった笑いになってるだろうと思った。

ジェームズはしばらく黙って俺を見つめていたが、溜め息をつき彼の手を俺の首に回し引き寄せ軽いハグをされた。

俺から離れたジェームズはいつもの彼の顔となっていた。

「別に握手じゃなくてもハグでもいいだろ?」

仲直りのなんとかは、とお得意の皮肉笑いでそう言った。

俺は心の中でほっと胸を撫で下ろした。

 

―――告白されるんじゃないかと思った……。

そう考えてはっ、と気が付いた。

 

 

 

―――何考えてんだ俺…!?

 

 

 

だんだんと顔が熱くなり、ジェームズに悟られなくなかったので彼に背中を向け元来た道を歩いていった。

―――落ち着け…そんなわけない…だってジェームズはエバンスのこと……。

 

 

 

 

 

逃がしゃしない

 

 

 

 

 

「え…?」

 

 

 

 

 

 

 

「いや、何でもないよ」

そう言って俺の隣りに寄って来て並んで歩いた。

「…?そうか」

「さて、これからどこ行く?」

「もう三本の箒には行けねぇなぁ…」

「じゃあ景気直しにゾンコに行って新作の花火でも買うか」

「おうっ」

威勢良く言って笑った。今なら自然に笑っている自信があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺とお前はそれ以上でもそれ以下でもねぇよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だから、それ以上俺の中に入らないでくれ。


あんまり自分では書いてて気に入らなかったけどUPしちゃった…。

実はこの話の続きがあるんですが…そっちもかな〜り気に入らない。

それでしかも長い(´д`;) なのでわざわざ表にリンクしないで

密か〜にココに張っときます。

06/04/15